第19話 15の災い、その3
「ねえねえ、ペリー。」
「なに? ちいちゃん。」
「神隠しや大量虐殺だとか、不幸な事件があってこその少年少女剣客隊よね。」
「そうね。正義って、悲しいね。」
「不幸をまき散らす! 少年少女剣客隊!」
「楓ちゃん!? それは言い過ぎ!?」
「まったく、どいつもこいつも不謹慎だ。せっかく我がご先祖様が、明治や東京だの汚れた日本国を、清く正しい徳川の江戸に戻してくれようというのに、みんなもっと喜べ! ワッハッハー!」
「人が死んでるんだぞ!? 喜べるか!? 家々! おまえが死ね!」
「こうなったら徳川の亡霊と末裔の家々を大砲で粉砕してやる!」
「この世に光を! 少年少女剣客隊!」
「良いキャッチコピーだ。」
「ふん。これから後13個も不幸を考えるご先祖様たちのことを思うと、家々は胸を痛めますぞ。がんばれ! ご先祖様たち!」
「おまえも頑張るんだぞ、家々。」
「桜先生!?」
「はい、静かに。席に着いて。」
子供たちが騒いでいると、桜先生が教室にやって来た。
「今の明治の世では、神隠し、大量虐殺が流行っているから、皆さんは気をつけてお家に帰るように。それではさようなら。」
「桜先生、さようなら。」
子供たちは寺子屋から去って行った。
「どうする!?」
「困った!?」
「あと災い13個もどうすればいいんだ!?」
「家重! おまえがカッコつけて、災いが15個も起こるなどと言うからいけないんだぞ!」
「すいません。だって15人いるんだもん。」
「だってもくそもない!」
江戸城では、家々のご先祖様の徳川15将軍の霊たちが、災い15個を創作する軍議が行われていた。
「もう既に、第1の災いとして、神隠し。第2の災いとして、大量虐殺はおこなったので使えない。」
「第3の災いをどうするかだ?」
「もう定番の巨人かでいいんじゃないか?」
「それ、いただき。」
「簡単に採用された!?」
「今は何でもいい! 災いを全部で15個考えるんだ!」
「おお!」
「人間のゾンビ―、キョンシー化はどうですか?」
「それ、いただき。第4の災い確定ね。」
「本当に何でも採用するんですね。」
「背に腹は代えられないんだよ。」
「なら、空からカラスの大軍が東京に糞をまき散らすなんてどうですか?」
「それ、いただき。」
「ええー!? そこは却下でしょう!?」
「なんでもいい! 地面に落とし穴を掘るとか! 銀行強盗をするとか! 食い逃げ! 万引き! なんでもい! 災いが必要なんだ!」
「ダメだ。霊が暴走している!? 英霊や怨霊でもない!? それ以上の存在を生み出そうとしている!?」
「私たち15人は、どこに向かって走っているんだ!?」
「家治! ここは我々に任せろ! おまえは第3の災いを行ってくるんだ!」
「分かりました。行ってきま~す! イエーイ!」
徳川15将軍の第10代将軍、徳川家治が明治東京の街に旅だった。
「あなたが我が徳川家の末裔の家々ですか?」
「そうだが・・・まさか!? ご先祖様!?」
「大正解! 私は徳川家治。第3の災いをまき散らしにやってきました。ちょっと危ないので、下がっていてくださいね。うわあああああー!」
家々たちの前に現れた家治の体が巨大化していく。
「体が巨大化した!?」
「そこら辺の近代建築物は破壊するので近づくなよ! 家々!」
「ご先祖様!?」
巨大化した家治は、日本を侵略する駅だの蒸気機関車などを壊していった。長屋などの平屋は足の裏で人踏みでペッチャンコであった。
「さらばだ! 家々!」
街を破壊するだけ破壊して家治の巨人は消えていった。
「カッコイイ! さすがはご先祖様! ありがとう! ご先祖様!」
家々はご先祖様の大活躍に笑顔で手を振るのであった。
「私たち何にもしてないじゃない?」
「違うわ。私たちが巨人を追い払ったことにすればいいのよ。」
「これで少年少女剣客隊も一目置かれる存在だね。」
「これでいいのか?」
「実朝くん、お父さんに言っちゃあダメだよ。」
「お父様には言わない。」
「私もお兄ちゃんに言わない。」
「私もお父さんに言わない。言ったら懺悔させられそうだもの。」
「私も蛍ちゃんに言わない。」
「ご先祖様! あと12個の災いもがんばってください! きっと、全ての災いが達成された時には、徳川家が再興する時! その時は僕が第16代徳川将軍になる時だ! ワッハッハー!」
家々の野望であった。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。