少年少女剣客隊

渋谷かな

第1話 第16代将軍、徳川家々

「でやあああー!」

「うわあ!?」

「ギャア!?」

「やられた!?」

 一人の若い侍の少年が、迫りくる刀を持った猛者共をバッタバッタと切り倒す。

「強い!? 強いぞ!?」

「なんだ!? こいつは!? 小僧のくせに!?」

「見ろ! こいつの刀の家紋を!?」

「三つ葉葵!? まさか!?」

「バレてしまっては仕方がない。もういいでござる。黒子達。」

「はあ。」

「かしこまりました。」

 若い侍の少年の言葉に、全身黒タイツで顔まで隠している隠密の黒子達が予定通りの行動に入る。

「静まれ! 静まれ! 皆の者! 静まれ! 静まれ!」

「このお方をどなたと心得る! 徳川十六代将軍! 徳川家々様であるぞ! 頭が高い! 控え! 控え!」

 若い侍の少年は、家紋の入った刀を高々に見せつける。

「徳川だ!?」

「やっぱり!? あの三つ葉葵は本物だったんだ!?」

「ははー! お許しください!」

 地面に跪いて土下座する侍たち。明治時代になっても、徳川将軍家の威光は絶大なる者があった。

「世が世なら、僕の天下だ! カッカッカ!」

 この物語は、徳川家々という少年の物語である。


 時は、江戸時代が終わりを告げた後。すぐに明治時代がきたのだろう。

「zzz・・・僕は偉いのでござる・・・zzz。」

 江戸の城下町の寺子屋で勉強する子供たちに混じって、授業中に気持ち良さそうに居眠りをするクソガキがいた。この少年が、徳川家々。

「桜先生! 家々が寝ています! 殺してもいいですか?」

「ダメです!? まったく徳川くんにも困ったものね。」

 家々の居眠りを告げ口する少女ちい。寺子屋の女教師の桜先生。

「日本人のくせに、だらしないです! 大砲ぶち込むわよ!」

「やめて下さい!? ペリーさんも落ち着いて。」

 ストイックな外国からの留学生の少女ペリー。

「桜お姉ちゃん! お腹空いた!」

「楓!? あなたは黙っていなさい!」

 お腹を空かせた少女楓。桜先生の妹である。

「キーンコーンカーンコーン。授業の終わりです。」

 その時、授業の終わりの時間がやってくる。

「やったー! 授業が終わった!」

「帰ろう! 帰ろう!」

「はあ・・・疲れた。」

 授業の終わりに救われてため息を吐く桜先生。明治初期であっても、学校の教師は、子供に振り回されて忙しいく疲れる。

「ふあ~あ。もう授業は終わりか? よい授業であった。」

 熟睡していた家々が目を覚まして、背筋を伸ばす。

「おまえは寝ていただけだろうが。」

「違うわい! 夢の中でも悪者共を徳川16代将軍として倒していたのだ!」

「嘘つき。あなたの徳川家は滅びたのよ。嘘ばっかりついてると殺されるわよ。」

「違うわい! 僕が必ず徳川家を再興してみせる!」

「無理よ。家々にそんな力はないもの。」

 容赦ないちいは、家々を追い詰める。

「そんなことはない! 僕は江戸城に入れる秘密の抜け道も知っているんだぞ!」

「私、お城に入ってみたい! 日本の歴史大好きです!」

「おお! いいぞ! 僕が江戸城に連れて行って案内してやる!」

「嘘だったら、大砲をぶち込むからね。」

 ペリーは、日本文学や歴史が大好き。お城にも関心がある。

「食べ物たくさんある?」

「お米も、お腹一杯食べれるぞ!」

「楓も行く!」

 楓は、お腹が空いているので食べ物に釣られる。

「みんなが行くのなら、ちいもいく。あなたたちだけでは不安だからね。」

 ちいも、家々、ペリー、楓と一緒に江戸城に行くことにした。

「いざ! 僕の江戸城へ! カッカッカ!」

「おお!」

 臆病で怠け者の徳川家々は、お調子者だった。こうして子供4人だけで明治政府に閉鎖されている進入禁止の徳川家の聖域、江戸城に向かうのだった。

「大丈夫かな?」

「知るか? 若のきまぐれだ。」

 もちろん黒子たちもご同行する。

 つづく。

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