ボツ・封印世界‘ストラトゥム・カルパー・テルミヌス’~妖精遊戯篇~
Uzin
見知らぬ場所は光のある洞窟
ふと目覚めるとそこは仄暗い洞窟の中だった。
洞窟の中だというのに暗闇に支配されていない不思議な場所。
周囲を見渡せば仄かに光る石や岩などがある。小さいな石などは床などに無造作に転がっており、壁などからはその石の素になったであろう岩が突き出している。
体は・・・問題なく動くようだ。地面に直接寝ていた所為で少々体が強張っている様だが、それ以外はなにか違和感は感じないから、多分体に異常はないと思う。
そこでふと気づく・・・、なんでここにいるのかが分からない。
体の中心付近でゾワゾワする恐怖感が込み上げてくる・・・、よし落ち着こう。恐怖に支配される前に思考で支配する。
まず、現状の確認。
洞窟の中、下はジャージを着て上はシャツ一枚。非常にラフな格好だ。日の光が入り込まない程の深さの洞窟に入るような出で立ちでは無い。
なぜそんな恰好で?の部分に関しては、記憶が無いから何とも言えんという状況。
結論、ある程度の知識は保有している状態で、自分が誰だか分からない状態。
・・・、物語に出てくるような記憶喪失の登場人物たちはこんな感じなのか・・・。お?自分が今まで読んだ本のことは・・・、詳細が思い出せない。
そんな感じの内容の本が有るのは理解しているが、内容自体はダメと来たか。
ヤバイなー、あやふやすぎてどうしようもない。
はー、動くとしよう。
洞窟の中だけど明るいから移動自体は問題ないだろう。
しかし、こんな恒久的に光る石があるなんてまるで異世界・・・。
・・・、そう・・・なのか?
いやいや。
イヤイヤイヤ。
やっちゃう?
「ステータスオープン」
―――
種族
ヒューマン
タレント
プレイヤー
スキル
平常心
装備
ティーシャツ(下着)
ジャージ(ズボン)
パンツ(下着)
―――
出来るなら頭の痛い人になりたかったよ。
どうする?こんな・・・、あー、ステータスが表示される世界とか。
記憶が無いのはそれが理由か?異界渡りの悪影響で記憶を無くしたとかそんな感じだろうか?
しかも何だろうな、こんな状況なのにこの程度で済んでいる理由が、スキルのお陰というのが一発でわかるというね。
それとタレントのプレイヤーってどういう意味だか。
詳細はっと。
―――
ヒューマン
二本の足で立つ外見的特徴を持つ基本種族。
プレイヤー
あらゆる可能性を秘めた存在。
平常心
外的及び内的な精神変調が起こりにくい。
―――
けっこうなチートだと思われるんですが。
身体能力に関してはどうだろ?表記されていないから平均的なものなんだろか?
体を少し動かしてみても、そこまで違和感を感じるでもないし・・・まー、異世界転移をした前提での話で考えればってことだが、目覚める前とそれほど大差ないと仮定しておこう。
ん?あれは・・・、スライムか。青い半透明の身体を持つ。不定形の筈なのに楕円形の形を維持しつつ移動する物体。スライムとしか言いようがないな。
その粘性体の体の中には核だろうか、赤っぽい感じの小さな球状の石がある。
っと、俺が暢気に観察していると目の前のスライムが唐突にこちらに飛び掛かってきた。
「おっと。」
ふむ、敵とみていいか。とはいえこちらは丸腰、武器になりそうなものは無し。素手でやるしかないか。う~ん、核を引きずり出せばいいかな?
飛び掛かって来たスライムは地面と衝突したときの衝撃で容が崩れている。どうやら動けないようだ。しかも、良い感じの形になっていて、ちょっと勢いを付けて手を突き込めば行けなくないかな?
よし、やってみるか。
手は・・・五本の指を伸ばして核を掴めるように親指の位置を調節して勢い良く、思い切りよく突き出す!掴んだ!そしてそのまま引き抜く!
俺の右手には核が有った。掌の上にちょこんと乗ったスライムの核を確認していると、目の前のスライムは核がなくなって容を保てなくなったのだろう。液状化して地面へと沁み込んでしまっている。
ふむ、この程度の相手であれば素手で何とかなるか。が、これ以上の存在だときついかもしれない。早急に武器になりそうな物を調達しないといけないだろう。
後食料もどうにかしないとな。核は・・・だめだな。固さから言って鉱物と思って良いだろう。食べる気にはならんな。
今俺がいる洞窟は一本道が続いているだけの単純な構造の様だ。
ここに来るまで十匹以上のスライムを倒してきたが、スライムの核はジャージのポケットの大きさを鑑みてその場に残してきている。
と言うか、今両方のポケットに三個ずつ入れているのだが邪魔でしょうがない。
一応換金出来るかもしれないので持っておくが、何か背負えるバックとかが欲しい所だ。
なので、所々に落ちているこの不思議な光る石も一切回収せずに移動している。
因みにこの光る石は青系の光だ。
そんなこんなで目の前には木の扉がある。見た目で分かるほどに立て付けが悪い。所々隙間があって外からの光がこちら側に漏れている状態だ。
ここで二つの推測を思う。
この場所が相当辺鄙なところで、過去にこの洞窟と外を隔てる壁と扉を設置して長らく放置されていた可能性。
もう一つは、この見た目の悪い状態から鑑みて文化水準が低い可能性だ。
文化水準が低い場合、身の危険から回避する為に下手に出ない方が良い可能性もある。が、このまま此処に居てはいずれ餓死してしまうのは明白。
この洞窟から早々に出られるという状況下で、そんな判断は出来ない。
まずは隙間から外の状況を確認してみるか。
足を地面に指しそして抜く、外に誰かがいる可能性を考慮して出来る限り静かに移動をしていく。
この間外からの反応は特に無し。
木の壁にできている隙間から外の様子をそっと覗き込む。
この時木の壁には触れないように注意だ。
洞窟の中は明かりがあるとは言っても、外の光量に比べれば微々たるもの。洞窟の明るさになれた目は少々痛みを覚えるが、まー、これは無視でいい。
外はっと、林いや、森と言って良い密度で木が生えているな。
下草は人の手が入っているとは言えない。人工物も無し。この洞窟を監視している人影も確認出来ないと。見える範囲には野生動物もいない様だ。
とりあえず、危険を感じるような状況では無い。
設えられた木の扉に手を掛けてみる。なんとかといった風体ではあるが、壊れるということは無いようだ。鍵もかかっていないな。
外に出るか。
ふー、この洞窟の深さがそれほどでもなくて助かったか。選んだ方が外に続く道で良かった。
さて、森に出れば食料も調達できるだろう。問題は、この森の生態系がどの様な物なのかだ。
スライムがいるような場所だ。それ以外にも色々と居るだろう。
そう思うと、外に出たとしても楽観はしないほうが良い。洞窟から出られると思って気を抜いていてはだめだな。
現在の主人公の状態
―――
種族
ヒューマン
職業
格闘家
タレント
プレイヤー
スキル
平常心
五本貫手
隠形歩法
持ち物
スライムの核×六個
装備
ティーシャツ(下着)
ジャージ(ズボン)
パンツ(下着)
―――
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