第2話 : 秋葉児童養護学園 ( 4 )




 あれから十四年経つが、紆余曲折ウヨキョウセツを経て今日コンニチ都民栄誉賞を授与して頂ける立場と成った。学園生徒達への生活面から細かく徹底を行きワタらせる管理は、完璧な成果へと導く教育理論 ″ ″ とメイ打ち、この業界ではスデに有名と成っている。


 その噂を耳にし学園側に里親を申し出る家庭は、今や順番待ちを出す程、期待と信頼を得ている。 早期の里親の順番交渉権と、より優秀な子供との縁組を望む夫婦は、学園協賛基金と称し多額の寄付金を積む事となる。すると、オノずと富裕層の里親が中心となるのだ。


 本日、会場参列者の実に8割は順番待ちの里親希望夫婦で、授与式後の学園事務室の大型金庫には、彼等が競う様に持参した寄付金が、ウナるほど納められている。


 日向﨑氏は、この寄付金に関し一括管理する一方、学園側には計上せず、先程の政治家に対する振る舞いと同様に円滑な事業の為と称して多方面に行き渡らしている。


 生徒のホトンどが、通常遅くとも5年生の段階で里親との縁組を結ぶ。 だが、6年生に成った糸川サユリは縁組処エングミドコロか、その話さえ無い。 勿論、彼女の里親を希望する夫婦は多数存在し、その為の寄付金も多額にノボっている。


 つまり、日向﨑氏が、彼女を手放したく無いのだ。 寄付金を集める手段として魅力なのも事実だが、彼にしてみれば、そんな事は二の次で、他にが存在する …。


 彼の学園経営理念として、生徒は ″ ″ と位置付け、管理育成する事をムネとする。あたかも、酪農家としてA5ランクの家畜を育て上げ、高額な条件で出荷するのと同様の感覚だ。


 現に、生徒が里親の元に引き取られる日、彼の手帳には、『出荷日』と赤字でメモされている。 日向﨑氏にしてみれば、国からの補助金が目当てで児童養護施設として名乗ってみたものの、現実は微々たる金額で到底、学園経費をマカナう事が出来ない。


 そこで彼は、学園の生徒を商品として価値を高め、取引先の里親に、生徒に掛かった支出経費の最低4倍以上の寄付金を納めて頂ける事を暗に条件として来た。




「こんなに私が愛して、愛して止まないのに、何でお前は、私の期待を裏切り続け、この様に落胆させるのだ!!」


 彼は、累々ルイルイと涙を床に落としながらムチを振るう。 それでも彼女はジッと奥歯を噛み締め、この狂人じみた仕打ちを耐え続けている。


 サユリの白いブラウスの背中に、鮮血がニジみ出る事により、胸に巻き付けてあるサラシが透け始めた。


 それを見て、彼はハッと我に返る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る