第1話 : 月夜の攻防 ( 6 )




 トラえた!!


 千に一つ!! ″ 赤い狼 ″ !!





 少女の電光石火の一撃が、彼の赤い左眼球から光を奪う。


 かさず、その返した手で、容赦ヨウシャなく右眼もネラう。


 それを反射的にカバった彼の右腕は、ヒジからソぎ落ちる。


 絶叫さえ挙げる間が無い。 次の攻撃が来る!!とっさに背を向け、致命傷的一撃をカワす。


 だか、偶然にも回転時に針金を束ねた様な尾が、少女の右頬をシタタかにハタいた。


 さすがの彼女も、一瞬たじろぐ。


 それを見て取った彼は、素速く右腕を拾い上げ、ヤリの要領で「 エイッ!!」とばかりに、少女の胸元へと投げ込む。


 受けた側は、真っ二つに転がす。


 そのスキに、スイッとクレーンから飛び降りたかと思うと、もうスデに、屋上端に彼は走り込んでいた。




 ヴァ… 獅皇兵団ヴァンセントの奴 …




 俺のラッシュ攻撃に押されていた訳じゃねぇのか …


 あの切り込み位置まで誘導し、高低位置を修正した上で敵の眼を正確に狙う…。




 そんな芸当が、そんな判断が、この緊迫した戦闘の中で、冷静に出来るのかぁっ!?


 まっ… あさかぁ…


 出来るはずはねぇ…


 そんな…ばっばかな…


 イヤ…


 出来るとすれば…


 余りにも各が違う!!


 違い過ぎる …



 マズイぞ!! マズイっ …!!


 俺が今の闘っている少女は、もはや、人間ではないのかもしれない…





 人間では無い、の …







なんてもんはよう…


 獅皇兵団ヴァンセントのお嬢さん?」


 クレーン上の彼女に問いかける。


「いつだって、な現実の前には、


 役立たずな品物だ…


 そうは思わねぇかい?


 お嬢さんよう …


 しっかしなぁ!?


 戦略のな意味ってぇのはよぅ!」


 彼は、未だオトロえを知らぬ、残された、隻眼セキガンで、彼女を返し射る。





の結果を、

 回避する為にあるのさァァァアっ!!」





 切り落とされた利き腕の代わりに、グイと左腕で獲物の女の子を高々と掲げる。


 スデに、最後の切り札を手中に収めていた。





 ─ 左から右へ風速15m、距離180m、このビルから下方、右43度、肉の万世ビル屋上。


 


 今の俺の脚力では200mが限界だ …


 獲物を担いでは跳べない …


 ヤツに追尾されれば確実にられる …





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