第1話 : 月夜の攻防 ( 5 )




 彼は、満月からクルう激流となり、滝つぼ目がけ、爪を走らせた。




『 鮮血の赤い狼ぃぃぃぃぃぃい!!!! 』


 と、咆哮ホウコウ一つ。




 彼の腕は、マサに、狼のヤイバの様相をテイし、更には、その残像の数を、10・30・50・100と増やして行く。


 少女は、ジリッ、ジリッと押され後退する事で、より低い足場をいられる。


 彼の腕は、狼の群れ、そのものと成り襲いかかる。


 また数は、どんどん増し、いには、彼女を残像の中へと飲み込み、オオい隠してしまうのだった。




ホウッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!咆ッ!!!!」




 人狼のラッシュ攻撃は、絶え間なく続く。


 少女は、今や千に近い狼の群れを相手に、攻撃のヤイバをギリギリの身のカワしで受けている。


 だが、防戦一方な彼女は、続け様に後退を余儀なくされ、後方の今や半分と成ったクレーン運転席まで、とうとう残り1.5mと追い込まれた。


「 さぁっ!! お待ちかねだぜぇ!!


 お前の内臓と御対面だぁぁぁっあ!!」





 彼女の腹部目がけ爪を大きく一振りした。




 ─ が、狙いを外す。




 おかしい…




 相手の背が急に伸びたのか?


 いや、相手がり上がって見えるだけなのか?


 彼の眼上に少女の細いアゴが見える。





 どちらとも違う…





 自分の足元が沈んでいるのだ!!





 彼の足元のクレーンには、いつの間にか切り込みが入り、その断面積の1/4を残すと、ゆっくり、お辞儀をする様に後方へと曲がり折れている。



 クレーン先端が、辛うじて屋上端の柵上に落ち着き、箸置ハシオきの様に据えられた。



「 ガゴンゴッ!!」



 衝撃音と共に、クレーン全体が大きく揺さぶられる。


 彼も体勢を崩し、一瞬、ラッシュ攻撃のスピードの手もユルんだ。


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