第1話 : 最上階の罠 ( 3 )




 そしてウラめしそうに、二度獲物の太ももに口づけし、


「その娘は獅皇兵団ヴァンセントだ!!


 お前達にクレテヤル!


 気を抜くなっ!!



 だがよぅ…!?さすがに ″ 人狼ジンロウ ″ を10人、


 一度に相手にしちゃぁ…


 生娘キムスメで無くても失神しちまうぜぇ…。」


 と、含み笑いを浮かべると再び口づけした。


「何だよ!自分だけいい思いして!


 こちらには、厄介ごとを回す魂胆コンタンかい?」


 と、人狼達は、ニヤニヤと卑猥ヒワイな笑みを浮かべ、彼女に近づく。


 少女はその気配を察し、胸に手を当て、何事か小さく呪文をササヤいた。


 すると、どうだろう!! 一瞬で、少女の黒髪は輝く金色コンジキと変わり、白いセーラー服は、中世貴族のゴチック調のヨソオい、それとなり、また車椅子にイタっては、見た事も無いスポーツ様式の斬新ザンシンな形になっている。


「オイオイ!ヤル気満々だなぁ…


 お嬢さん!!


 アキバ界隈カイワイだけに、で、


 俺達を楽しませてもらえるのかい?」


 と、人狼の一人が、おどけながら、腰をイヤらしく前後に揺らしてみせ、少女の口元を、その爪ででようとする。


 他の連中も、それくらいにしておけとばかりに苦笑した。




(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)



「グッわぁぁぁー!!おオォォー!!」


 闇夜も払う叫びを挙げる!!





 悪戯イタズラ挨拶アイサツ代わりにした人狼は、爪はオロか腕の付け根から頭上高く血飛沫チシブキを撒き散らし、それはゴドンと落ちた。



「このクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」



 怒りをアラわにした彼等は皆、本来の魔物の腕に戻り、長く強靭な爪で左右一列、五人づつの陣形ジンケイで襲いかかる。


 少女は瞳を閉じたままジッと姿勢は低く、ややウツムいた形で、その左右の列中央に、こちらもグンと首尾よく踏み込む。


 列の中で、彼女が左右前後、車椅子をクルリ素速く回転させたのは見て取れたが、余りにも一瞬の動作で、何が起きたのか分からない。


 未だに、自分達の状況が飲み込めない彼等は、通り抜けて行った少女を振り返ろうとする。


 が、その首はカシげる様に、そのまま斜め下にドスン、ドスンと一斉に滑り落ちてしまった。


 誰一人として声を挙げる者は無い。




 ─ イナ、間が無かっただけなのだ。




 仲間達の代わりに、彼が大きくウナる!!


「オイ! 5秒だぞ!! オイ! 5秒だ!!


 いくら獅皇兵団ヴァンセントとはいえ、


 人狼10人相手に、たったの5秒だゾ!!」


 彼の眼前には、首と胴が離れ、バランスを保ったままの人狼がある。

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