✝️ 真・VAN✝ARK / シン・ヴァンセントアーク

つかさげんご : 師 厳吾

♦1期 秋葉編: 1章 [ 色欲 ]

第1話 : 神隠し

第1話 : 雨の秋葉街 ( 1 )




「 バケモノめ …」



 き捨て、唇を噛んだ。




 灯りの消えた教会内の窓に、雨の飛礫ツブテが吹き付ける。





 チィ… 俺でさえ神様に祈りたくなってきたぜ …





 神の子を抱擁ホウヨウするマリアが、天井窓のステンドグラスから此方コチラへと笑みを向ける。





 ─ 稲光イナビカリが走る。





 と同時に、黒い影がに映り込み、ゴウという雷鳴ライメイが早いか、その背後から車椅子の少女が、おどり込んで来た。


「ガシャーンパラパラバリバリーィン!!」


 ガラス破片ハヘンが、バラバラと降り注ぐ中、少女は無言で、それを背中に受けている。


 チキショー


 もう!来やがった!!


 俺には、祈る時間さえ与えねぇのか…







 ─ 少女の顔は見えない。



 だが、時折トキオリ閃光センコウが彼女の輪郭を生むと、ガラスの破片を静かに越えて来る。


 あの娘 …


 獅皇兵団ヴァンセントなのか!?


 クソッ!!


 厄介ヤッカイな連中にニラまれちまった…



 切れ長の赤い瞳は、キッと少女を見つめ、反転そのカラダは重厚なドアを蹴破ケヤブり外へ駆け出す。


「俺も、まだ命はオシしいからナァ!!」


 教会の外は降り続く雨と、強さを増した風が追う者、追われる者の体力をウバう。


 よく見ると逃亡者たる彼の左肩には、人間らしきセーラー服姿の女子高生が、グッタリと身動きもせずカツがれている。


 チョイと重いが、せっかくの獲物エモノを、

 置いて行けるかヨゥ!!





 秋葉街を一望する、この高台の教会から、急な長い石階段を、それをカツぎ、ね飛びながら下り降りて行く様は、ケモノか魔物かと言ったタグいである。


 しかし、彼の姿は、人間その物であり、むしろ綺麗キレイな青年で有りさえするのだった。



 やわら、背後から執拗シツヨウセマる車椅子の少女は、いったい何者なのか。


 彼女は、瞳をジッと閉じたまま、かの長い石階段の前にノゾむと、スルリ車椅子ごと階段スロープに易々ヤスヤスと飛び移り、サッと車輪を横向きにして、スケートボードよろしく、難なく一気にスベり降りて行く。


 そんな彼女の様子とて、人間離れした所業ショギョウであろう…



 今宵コヨイの逃走劇は、始まっているのである。






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