絵描き

まーくん

黒い顔

 私はしがない絵描きだ。

 名前をフルカワという。


 丁度郊外と都心の中間あたりに位置する地元で育ち、目的意識も殆ど無いような人ばかりが集まる美術系の大学を出て、今は何とか自分の好きな絵を描きながら暮らせている。

 展覧会の締め切りも近いというのに碌な絵が仕上げられないまま、今こうして現実逃避のように文を書いている。

 どうせ誰も読まない文章だろうし、だらだらと書き連ねていくつもりである。


 私の絵描きとしての人生を考えるときに、いつも思い浮かぶ出来事がある。

 恐らく、絵描きとしてだけでなく、私の人生において一番重要な出来事だろう。


 はっきりと覚えている。あれは大学3年の頃だ。

 今と同様に展覧会の締め切りにも追われて、レポートも残りは一枚というところでまるでやる気が出ずに、全て先延ばしにしようとしていた夏の日だった。

 朝早くにコンビニへ出かけた時だ。家を出て真っ直ぐ行った道の、三つある曲がり角の内の二つ目の角を曲がった所で、彼女は立っていた。

 この時間には珍しい女子高校生らしき姿だったことや、その制服が遠く離れた地元の高校のものであったことは些細なことであった。何せ、彼女の顔は、


 木炭で顔のデッサンを塗り潰したかのように、真っ黒になっていたのだから。

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