第67話

≪スターロックマイン!直線に入ってもまだ先頭!エンペラーズカップ、苦しいか!少し後退していく!替わってウィークポイントとサターンズベストが伸びてくる!≫

「ヒウラ!逃がさない!」

「サラさん!?サターンがいないと思ったら!」

「ワイを無視するなやあ!」

 三者三様、ワイワイと馬を追っている。そこに突っ込んできたのがコーラルティアラの莉里子だ。

「逃がさないわよお!?」

「アァ!?小娘はすっこんどれ!」

「リリコさん!勝負!」

「来た・・・」

 火浦はスターロックマインの心配をしていた。ここまで、かなり扱いている。そろそろタレ始めてもおかしくはない。何より、スターロックマインの脚元はそう強くないのだ。しかし、引くべきか押すべきかで言えば、ここは押すべきだった。

「おおおおお!」

 さらに、ぐいぐいと力を込めて押す。馬も、それに応えて伸びていく。二枚腰というやつだ。しかし、他の馬も伸びている。

 結局、3頭がもつれ合ってのゴールとなった。最内スターロックマイン、中にウィークポイント、外サターンズベストの格好だ。4着には莉里子のコーラルティアラ。そうこうしている内に、3着が発表された。サラのサターンズベストだ。

「オーマイゴッド!」

「おう、若造。どっちや?」

「ま、負けてませんよ、俺は!」

「強気やのお。ええぞ、勝負や」

 カッカ、と笑う尊。火浦は固唾を飲んで、電光掲示板を見守る。10分後、発表されたのは。


≪1着、ウィークポイント!ウィークポイントです!2着に1年目火浦のスターロックマイン!ハナ差3センチ!≫

 火浦の3センチ差の惜敗だった。同着にしようという意見もあったが、GⅠである。厳密に着差が定められた。火浦がGⅠ未勝利の新人ということもあった。

「わっはっは!ワイの勝ちや!」

「負けた・・・」

 火浦は、悔し涙を流し始めた。その火浦の頭をクシャクシャにし始めたのは、武豊の姪の方、莉里子である。

「男の子が泣くなー!かっこ悪いぞお!?」

「ぐっす、えっぐ・・・」

「お前は頑張ったよ、光成!」

 佐藤も、背中を叩いて、讃えている。

「なんや、みんなもっとワイを称えんかいな!?これで最年長GⅠ勝利と有馬記念制覇やねんぞ!」

「誰がよ!とっととウィナーズサークルでファンに拍手でもされてきなさいな!」

「ソウデス」

 追い払おうとする莉里子に、サラも同調する。

「なんやなんや!知らんからな!ワイは行くで!」


 と、むくれっ面だった尊も、カメラの前ではコロッと人が変わるようで、

「いやあ、火浦君、強かったですねえ。でも、僕の若いころ、思い出せますね!」

 などと、一応は持ち上げてみせるのだった。

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