世界で活躍する2年目春

第68話

 さて、年が明け、新春競馬は金杯から始まる。佐藤はサイドエンゲージで中山金杯を勝ち、サイドエンゲージは重賞2勝目を飾った。一方、京都競馬場ではまきながマイルは長いと見られていたミスターオースチンを重賞・シンザン記念で2着に食い込ませた。1着は莉里子のマカデミアナッツだ。脚の切れる牝馬で、オープンも勝っている。桜花賞からNHKマイルカップに参戦することを明言しており、莉里子は阪神ジュベナイルフィリーズを2着したテンシノナミダとどちらを取るのかが注目された。

 日経新春杯には、グリッテングラーテが出走した。菊花賞の疲れの影響から休んでいた本馬だが、今がむしろピークと感じられた板東調教師が出走させたのである。鞍上は佐藤。

「クゥエルよりもいいかもな、これ!」

 気が付けば3馬身差の圧勝劇を演じ、2週連続で重賞勝利となった佐藤である。これを置き土産に、フランスへ向け出国していった。


「慶太郎さん、帰ってきたらフランスの話、いっぱい聞かせてくださいね!」

「ジャンヌちゃんとの話も」

 とは、火浦と福留。まきなと同期3人で、羽田空港まで見送りに来ていた。

「ジャンヌとは何もないからな!」

「お前、ドバイ行くだろ。様子見てきてくれ」

「そうだね!よろしくしてるかどうか、見とかないとね!」

 リキュールがドバイ国際競走のドバイターフに出走予定である。まきなは生産者として参加予定であった。

「よろしくするか!いや、仲間としてはちゃんと付き合うけど!」

「「付き合う!?」」

 ヒートアップしていく後輩たち。ジャンヌの2歳も年上なんだぞこいつら?と、佐藤は頭を抱えざるを得なかった。


 シャルル・ド・ゴール国際空港には、ジャンヌが迎えに来てくれるらしい。彼女らしい人影を認めた佐藤は、手を振ってみる。駆け寄ってきた。でも、知らない人だ。

『キャー!会いたかった!』

 抱きつかれ、何やらフランス語でまくしたてられる佐藤。突然のことに戸惑っていると、やはり呆然とした様子でその様子を見つめるジャンヌがいた。

「じゃ、ジャンヌ!?」

「慶太郎、サン・・・」

 ダッ!と駆け出してしまったジャンヌを追いかけることもできず、佐藤は謎の女性にまだフランス語をまくしたてられていた。

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