第46話

「はぁはぁ・・・2着か」

「いやあ、雄二。驚いたよ」

 佐藤が馬を寄せてくる。

「俺、4コーナーで勝った!って思ったもん。それが、直線最後まで絡み合いでさ」

「でも、負けてりゃ世話無いですよ」

「まあな。でも、重賞だから2着賞金もらえるぜ?オープンなら、だいたい出走できるさ」

「あっ」

 そう、重賞は収得賞金が2着まで与えられる。収得賞金がないと、いくら馬が強くてもレースには出られないのだ。

「次はオープンからやってみな。お前にGⅠは早いからな!」

 うなだれる福留であった。


 10月、秋シーズン最初のGⅠはスプリンターズステークス。莉里子が出ていた。2番人気、サトラスに乗っている。

≪4角先頭!武豊!サトラスが飛ばす!≫

 『来るなら来い』と言わんばかりのまくりであった。さて、後ろから足を伸ばしてきたのは・・・

「来たわね、火浦くん!」

「・・・・・・!」

 火浦光成と5番人気のカトーラップワンである。得意の剛腕追いでガシガシ追っている。なんせ、勝てば初GⅠ勝利である。GⅠはいくつも勝っている莉里子と違って、ここに賭ける意識が違った。

「うおおおおお!」

「残念!ちょっと遅かったやね!」

 結局、1馬身離されてゴールとなった。

「チクショッ・・・」

 珍しく感情を表に出す火浦。なんせ、初GⅠである。悔しくてたまらない。

「でもね、火浦くん」

 そこに声をかけるのは莉里子。

「まず馬を労ってあげるべきやと思うんよ」

 ハッ!と馬の方を見る。カトーラップワンは息も絶え絶えだ。

「ラップ・・・」

 首を撫でる。5歳馬だ。まだGⅠを狙うチャンスもあるだろう。

「次、勝とうな」


 10月の1週目、やはり同期3人でステーキ屋に集まっていた。当然、佐藤もいる。

「でね、佐藤先輩言ったんだよ。お前には重賞は早いって!ひどくないか?」

「俺も、莉里子さんには勝てんかった」

「すごいなー、二人とも!重賞2着!」

 まきなは素直に祝福している。彼女自身は重賞を2勝しているが。

「お前はミラクルフォースのアルテミスがあるだろ」

「そうだよ、無敗馬じゃないか。チャンスだ」

「うーん、ミラはねえ・・・」

 まきなは考え込むようなフリをして言った。

「強いよ!すんごく強い!」

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