魔法少女は闇の姫となる

ルナ

プロローグ ある森でのこと

 ある町はずれに位置する広い森。少女はその森へ一人で調査に来ていた。

「ライトアロー!」

 光の矢で魔物を倒すとため息をついた。

「はぁ…。今日も特に収穫なしかぁ…。」

 その少女は数日前から一人で森の調査をしていた。

 というのも森の瘴気が濃くなっているという報告があり、その原因の手ががりを突きとめるべく少女が調べていた。


 少女の名は『ルナ=リュミエール』という。魔法少女学園に所属する魔法少女だ。

 一か月前に見習いから昇格したもののまだ魔力が完全に開花しておらず、実戦経験もない。ルナのクラスのメンバーはクラス単位の討伐任務へ行くことになっていたのだが、実戦経験のないルナには危険であると判断されたため、クラスでルナのみが任務のメンバーから外れた。

 そこで、経験を積むために危険の少ない調査任務を一人で行っていたのである。


「みんなは今頃なにしてるのかなぁ…?」

 寂しさを感じながらクラスのみんなのことを気にかける。



 それから数時間後・・・

 日も傾き、昼と夜との境目の時間

 もっと細かくいうと夕方から夜へと変わり始めたとき。


「『今日も瘴気の濃度が少々高い程度で特に変わったことはなかった。』って報告するしかないかなぁ…。実戦経験を積むためだから危険を感じたらすぐに帰還してもいいって言われてたけども特に危ない目にもあわないし、特に変わったことがないのもほんとだしなぁ…。何か見逃してるのかな?」

 とはいうもののルナの魔力の残りはそう多くない。さらに、夜になると魔物は活発に行動するようになるため帰るには丁度良い時間である。

「でも時間も時間だし、今日のところは帰ろう。」


 そうして森を出るために来た道を戻るルナ。しかし、相当奥まで進んでしまったのかそれとも迷ったのか、歩いているうちに日はすっかり沈み、月が昇って夜になってしまった。

「魔物も活発に動くようになるし急いで帰らないと…。」

 ルナは焦るがまだ出口が見えない。

「道はこっちであってるはずなんだけどなぁ…。」

 そうこうしながら約10分森をさまよっているとあることに気付く。

「(さっきからやけに静かだな…。そういえば夜になってから魔物に一度もあってない。)」

 活発に行動するはずの魔物に遭遇するどころか、鳴き声すら聞こえないのである。

 些細なことだが異変であることには違いない。そんな状況にルナも緊張感が高まる。

「(何かに見られてる気がする…。)」

 ルナは何らかの気配を感じていた。とはいえ確証もなく、魔物などであれば危険なため急いで出口があるであろう方向へ向かう。

 すると、背後で『ガサガサッ』と茂みが揺れる音。

「(ッ…!)」ルナはとっさに身構え、茂みの方向を向く。

 バサバサバサッ・・・

 数匹のコウモリが茂みから飛び立っていった。

「なんだぁ、コウモリかぁ…。」

 ほっと胸をなでおろすルナ。踵を返し再び歩みを進めたその時。

 カクンッ

「(…え?)」

 急に膝に力が入らなくなりその場にルナが倒れてしまった。

 それどころか、「(体に力が入らない…。)」

 指一本動かすことができなくなり、やがて意識も薄れ始める。


 空には煌々と月が森を照らしながらその様子を眺めていた。

 ルナが意識を手放す前に見たのは空に浮かぶ月と、邪悪な笑みを浮かべる年端もいかない少女の顔であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る