てんにょ

 幼稚園の卒業文集でも昔から、『将来の夢』は鉄板だ。


私は伸び伸びとした天使の絵を描き、先生に『てんし』であると言った筈だった。


しかし開けてビックリ。

『てんにょ』と記載されているではないか。


それをわんぱくキッズ達が見逃すはずがない。


「さとこ、将来『てんにょ』になりたいんだって!あはははは!」


「違う!『てんにょ』じゃない!『てんし』だよ!」


私はムキになった。


今となっては『てんにょ』であれ『てんし』であれ、かなり微笑ましい回答であると思える。


しかし、まだ幼かった私の自己アイデンティティーは崩壊をまぬがれようと必死になった。


結局、その『てんにょ』エピソードは小学校時代、ちょくちょくネタにされたのだった。



私は今、天使のように優しい気持ちを持ち、天女のように妖艶な女性になれているだろうか。


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