ほたる

 ほたるを初めて見たのは小学生の時だ。


祖父が捕まえて見せてくれた。


「さとこ、ほたるだぞ。」


そう言って祖父はゆっくりと両手を開いた。


ほたるの光はとても弱かった。

その時の私は正直がっかりした。


しかし、その記憶は30年程経った今でも鮮明に覚えている。


思い出す度に温かい気持ちになる。


私は嬉しかったのだ。


何とか孫にほたるを見せたい祖父の気持ちが。


子供ながらに、ちゃんとわかっていたのだ。


私は祖父が大好きだ。


祖父に2度と会えない今も、あの時のほたるの光は消えずに私の心を照らしている。


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