僕の仕事は彼女を殺すこと

肺のやつ

プロローグ1 突然の出来事

僕の名前は荒史あらし

変な名前だろ。


僕は今、高校を卒業して、彼女と付き合って一緒に暮らして、とてもハッピーな毎日を送っている。


はずだった……



◆◆◆




僕の高校生活の終わりには、卒業すると同時に彼女ができた。

彼女の名前は秘密だ。

正直のところ、高校の時に付き合いたかったのだけど、高校が恋愛禁止だったので、卒業からになってしまった。


彼女は僕の幼馴染で、学年一の成績で美人だった。

どれくらい美人だったかと言うと、

喧嘩していたところに彼女が通ると、喧嘩は収まり、喧嘩をしていた人達はすぐに仲直りし、彼女の方にお辞儀するくらい美人だった。

いじめ対策に役立つな。


幼馴染と言うことは、僕と彼女の関係は幼児の時にはもう決まっていたのだ。


「付き合って、くれる?」


そう、幼彼女が言って小指と小指で指切りげんまんした時の記憶は今でもはっきり覚えている。


そんな素敵な彼女を、


僕は、


殺すことにした。



◆◆◆



5月中旬


僕はいつものように彼女と一緒に寝ている……いや、僕は起きていた。

明日は彼女の誕生日だったのだ。

彼女に何が欲しいと聞くと、棒状のものならなんでも良いと言ってきた。

棒状のもの……

僕は、棒状のものと言ってももっと詳しく教えてと彼女に言うと、出来るだけ金属製のものがいいと言ってきた。

棒状で金属製のもの……

僕は必死に悩んだあげく、これにした


金属バット


プレゼントにバットというのは女に対して、しかも野球未経験のやつに渡すものでもないのだけれど、棒状で金属製のものって、金属バットしか思いつかないじゃん。

しかしこれで良いのだろうか。

棒状で金属製のものを彼女は本当に欲しいのだろうか。


この時、僕は薄々異変に気付いていたのかもしれない。


でも、


明日は彼女の誕生日か…


楽しみすぎて寝れねぇ。





AM1時


僕は目を開ける。

僕は膀胱ぼうこうに水が溜まったので、トイレに行こうとした。



俺の隣には、


彼女はいなかった。


◆◆◆


彼女は一体どこに行ったのだろう。

僕はずっと起きていたけど、ごそごそと言う音は聞こえなかった。

じゃあ彼女はどこに……

僕は考え続けた。

そして結論を出す。

探しに行くか。


僕はそっとドアを開け、外に出る。


と……


目の前には彼女がいた。

その時、彼女の右手にはコンビニの袋を提げていた。

コンビニで何か買ったのだろう。

僕は、

「コンビニで何を買ってきたんだ」

と気軽に言う。

すると彼女は、

「あ、ああ、な、なんでもないよ…」

と慌てて言って、中に入っていった。

僕の彼女は優秀で美人なんだけど、どこかしら変なところがあるんだよな。


いや、変なのは僕かも知れない。

あの時、もっと追求していたら。

だけど、もう遅かった。


彼女は中に入ると、すぐさまトイレに駆け込んだ。

なんだろ?

まっ、気になるけど、黙っておこう。

トイレで何していたのとか聞くと怒りそうだし。

僕は、すぐにベットに倒れ、寝た。


◆◆◆


翌朝、


隣を見ると、彼女が……いない!?

えっ!? と思った俺はとりあえずリビングに行くと、一つの張り紙と袋が置いてあった。


張り紙には、

『あらしくん、おはよう

これから私達は離れ離れになるけど、絶対悲しまないで。

私、脳を奪われたの。

脳を奪われて今、洗脳される寸前なの。

一週間前から。

誰かに。いや、

何者かに。

だから今、こうして洗脳される前に手紙として書いているの。

昨日の夜、私が途中に家から出て、帰ってきたあの女の人いたでしょ?

あれ、私が洗脳された時の姿なの。

今はまだ洗脳が完全に完了していないから、こうして手紙を書くことが出来るけど、多分あらしくんが起きるときにはもう私は洗脳されて何処かに行ってしまうと思うの。

だから、袋の中にあるボタンを押して、私とあらしくんだけがいる世界に行って私を、


殺して欲しい。


もう今は私じゃない。

私は化け物よ。

あらしくん。私の為に買ってくれた金属バットで私を殺……』

と書かれていた。

その張り紙は『殺』と言う文字で途切れていて、何滴かの水滴、涙が張り紙に染み込んでいた。

ということは、この手紙は1時間くらい前に書かれたと思う。

そして血。

がついていた。

その張り紙を僕は全部見通し、その場で号泣した。

悲しい。胸がぎゅっと締め付けられるようだ。僕がもっと早く彼女の状態に気づいていれば、こんな事にはならなかったかも知れないのに。

僕は彼女を洗脳した奴が憎くなり、しばらく僕は座り込んで号泣した。


僕は服の袖で涙を拭いた。

泣いたらダメだ。

今すぐ彼女を助けに行こう。

そう僕は思い、彼女を助けに行くために、戦闘用(スポーツ用)の服を着替え、金属バットを持って、袋の中からボタンを取り出す。

そこで僕は異変に気付く。

袋の中にボタン以外の何かが入っていた。


手。


肩から先のない手。


不揃いに切られた手。


切り後には赤い血。


僕はその手を掴んだ瞬間、すぐに僕の手から切られた手を放す。


嘘だろ。

これ、人を殺したのか。

まさか、僕も下手したら殺されるのか。

彼女に。


僕は急に恐くなった。

彼女を殺すなんて、


出来ないよ。



でも、


彼女が殺して欲しいって、


殺してと、


言っている。


何を俺は言っている。


俺は、


殺されるのには慣れてきたはずだ。


なのに、


またあの記憶が、


蘇る。


◆◆◆


俺はあの記憶が蘇った。


俺は一回死んだことがある。


交通事故で。






はっ!?



今はそんな弱音を言っている場合じゃない。

彼女を助けるのが最優先だろ。

俺はボタンを押した。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕の仕事は彼女を殺すこと 肺のやつ @maradais

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ