二二 F棟504号室
鬼多見が鵺と
永遠が小さく声を漏らし、舞桜と佳奈は完全に悲鳴を上げたが、天城だけは冷静に見つめている。
刹那も眼を見張ったが悲鳴はかろうじて抑えた。これでも永遠の姉だ、ここで動揺を見せるわけにはいかない。
案の定、鬼多見はすぐに立ち上がり鵺にとどめを刺そうとした。
ところが突然金色の巨鳥が現われ彼を狙って炎を吹く。
鬼多見は素速く避け、手にしていた仕込み刀を巨鳥に投げつけた。
刀はブーメランのように回転しながら巨鳥の首を
なに、あれ……
余りの出来事に今度は誰も悲鳴すら上げない、名探偵の天城も顔を
刹那も唖然としてしまった。
あんなのどうするのよ……
永遠が茶の間から飛び出そうとする。
「待ってッ、どこに行く気ッ?」
刹那は彼女の手を
「放してッ、おじさんを助けなきゃ!」
「言われたでしょ、結界を維持しろって」
「でも、あんな化け物、おじさん独りじゃ……」
「あんたが行っても倒せないでしょッ?」
一瞬、永遠は言葉を詰まらせ考え込む。
「でも……わたしは火に強いから盾ぐらいにはなれる……」
決意を秘めた眼差しで刹那を見上げる。
「なに言ってんのッ? そんなことしても、おじさんは喜ばない!」
「違う、おじさんを喜ばせたいんじゃない。わたしは守られるんじゃなく、誰かを守れる自分になりたいの!」
「永遠ちゃん、気持ちはわかるがボクも賛成できないな。あいつに任せよう」
「そうだよ、行っちゃダメ」
天城と舞桜も永遠を止めようとする。
「永遠、厳しいことを言うけど、万が一おじさんがやられたらここを守るのはあんたしかいないんだよ。
あたしじゃ結界の維持はできない。誰かを守りたいなら、ここに
永遠の瞳に動揺が現われた。改めて部屋にいる一人ひとりの顔を見つめる。
「姉さん……」
再び視線を窓に向ける。
鬼多見は巨鳥が吹いた炎で燃えた生け垣の火を呪術で消しつつ、鵺の攻撃を躱している。
「おじさん……」
永遠はギュッと眼を
「お母さんが帰って来るまで数時間はかかる。おじさんがやられちゃったら、たぶんわたしじゃ持ちこたえられない……」
「なに言っているの?」
「ごめんなさい、こうするしかないの!」
永遠は刹那たちを振り払うと、茶の間から飛び出す。
梵天丸がいち早く後を追う。
「永遠!」
刹那も後を追おうとした。
「ダメだッ、行ったらキミは殺られる」
天城が彼女の手を掴んで止めた。
「放してッ、永遠が!」
「ボクらでは彼女を止められない」
「でも!」
「キミは判っているだろ? ボクらは永遠ちゃんに以上に足手まといだ」
刹那は
あたしに力があれば……
涙が溢れそうになり窓の外にいる式神を睨み付けた。
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