第46話 戦闘開始
会議室へと集まって、モニター越しに各飛空艇と作戦の確認を取った後、クロード達討伐隊は、竜の生息する空域へと向かって行った。
時間にして約半日。
一時間もすれば夕暮れになる頃合いに、その場所へと辿り着いた。
そこは、何もない荒野の上の天空。
眼下の景色に生き物の影はなく、元は町だった事がかろうじて窺えられる荒れ地が、地平線まで延々と続く様な場所だった。
そして……。
無限の青のさらに先にあった、蒼穹の空。
そこに、この世界の王者は泰然とたゆたっていた。
大空を羽ばたく生命の王者は訪れた狩人達を睥睨した。
『オオオオオオォォォォォォ』
広い空を何メートルもある巨体で悠然と飛び回るその竜は、居並んだ飛空艇を確認して一鳴き。
それがそのまま、戦闘開始の合図となった。
「目標確認、これより、作戦開始よ。さあ皆、気張って行くわよ!」
「各自気を引き締めて己の仕事にかかれ!」
アリィとジンの号令と共に、非空戦内の空気がイッキに引き締まった。
「対竜部隊、用意!」
中央にあるモニターの中では、威嚇する様に一鳴きした竜が翼をはためかせ、塔だ伝いの船のいるこちらへと向かって来ようとしている。
それに対抗する様に居並ぶこちらは、フロートユニットをつけた対竜部隊を輩出、前線へと向かわせる。
竜は己に接近してくる存在に気が付いて、それらに一睨み。
たったそれだけ。
それだけの事だったが、目に見えない威圧感が物理的なエネルギーとなって、襲い掛かる。こちらの体力を奪いに来るような威圧だった。
竜のそれは対等な存在を見つめる視線などではなく、道端に堕ちているゴミクズでも見る様な視線だ。
けれどだからこそ、その竜の視線には否応なく畏怖の感情を呼び覚ます、圧倒的強者の気迫がこめられていた。
「すごい……」
モニター越しに竜を見つめるイリアの呟きが聞こえた。
彼女でも、何かに圧倒されるという事があるのだろう。
隣で巨躯を見つめているこちらと同じ気持ちでいるようだ。
「久々にちょっと怖気づきそうになっちゃったかも。ね、クロード。何かあったら励ましてね」
「そんな事になったらまず僕の心が折れそうな気がするけど、まあ言うだけならタダだしね。任せてよ」
「適当すぎだよ!」
他愛のない会話で緊張をほぐす。
いつもなら、そんな会話は必要ないのだけれど、やはりあの竜は今までの相手とは格が違うようだった。
「よーし、がんばるぞー!」
圧倒されつつも、立ち直るのがはやいのもイリアだ。
出番はまだだが、自分自身に向けて気合を入れるように、彼女はわざわざ武器を手にして握りしめた。
モニターの中では、ユーフォリアと同じ者達……対竜部隊が竜の周囲に展開していた。
己を取り囲んだのを見て竜は口を開く。
『オオオオオオオオオオオオォォォォォォ……』
先程の威嚇とは比べ物にならない大声だ。
空気の震えが鋼鉄の壁ごしに伝わる様な鳴き声が聞こえてる。
しかし、それにも彼等は負けてはいない。
至近距離からの轟音に対策していた彼らは、間近で発せられた強者のプレッシャーに一瞬だけ怯みを見せつつも、誰一人脱落することなく果敢に相手へと向かって行った。
数の強みを生かして、統率された動きで巧みに相手に迫り、攻撃を与えていく。
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