第44話 手伝って
「覚えたって、すさまじい才能だな。ひょっとして、イリア超えるかもね」
「フィリアさんにも勝っちゃうかな?」
「さあ、それは分かんないけど」
言ってる傍からも、彼女はイリアによく似た動きで、治安部隊を着実に一人、また一人と沈めていっている。
「そういえば聞いてなかったけど、ユーフォリアって竜相手にどんな風に戦うつもりだったんだろう」
小声で言った疑問だが、当人が戦いながらも聞いていたようだ。
「ん……。えっと、習ったのは凄くおっきな武器で、切ったり叩いたり潰したりする方法」
考えながらも、ざっくばらんとそのやり方を答えてくれた。
「そっちの肉弾戦なんだ!?」
とても新鮮な驚きだらけの話だ。
そんな風にしている間に、襲い掛かって来た相手は全滅してしまう。
前回と比べてやけにあっけなかった。
やはり距離が離れているだけあって、精鋭をすぐには送れなかったのかもしれない。
「ふぅ、終了っと。おつかれクロード」
「イリアもね。今回は比較的楽で良かったよ。被害はちょっと出ちゃったけど」
「後でごめんなさいしなくちゃだね」
周囲が被った被害……壁の穴やら、壊れた店の商品やらを見て、この後の事に少しだけ気分が重くなった。
とりあえずは身動きが取れないように、襲って来た連中を拘束しておこうと思うのだが。
イリアが、倒れた者達を見ながら何事かを考え始めた。
「どうしたの?」
「ちょっとだけ、ね。……この人達も、仕事だからこんな事してるんだよね。そう考えたら悲しいなって」
「イリアは、また……」
「だって、竜がいなかったら。この人達だって、こんな事きっとしてなかったんだよ」
「それは、そうかもしれないけど」
彼女の言いたい事は分かる。
元々の原因である竜がいなければ、彼等はこんな行動をしなかっただろう事も。
だがイリアはそうでも、そんなかもしれない想像でこちらを襲って来た敵を許せるほど、クロードは甘くできてはないのだ。
「今回は大丈夫だったけど、もしかしたら……運が悪かったり調子が悪かったりしてたら、誰か怪我していたかもしれないし、最悪命を落としていたかもしれない。イリアはそれでも、この人達を許そうって思えるの?」
「うーん、どうだろう。その時になってみなくちゃ分かんないかも」
「あのねぇ」
確かに、イリアならそうなのかもしれないが。
それでは話にならないのではないだろうか。
呆れてしまうのだが、彼女はまだ何か言いたい事があるようだった。
ゆっくり言葉を探す様に、口を開いていく。
「私は……そうしたいんだ。誰かがそうじゃないって言っても、もしかしたら大変な事になっちゃった時の私は、今言った事とは違う事をしちゃうかもしれないけど、それでも今の私はそうしたいんだ。だってそれが私だし」
「イリア……」
「だからね、クロード」
ここまでくれば、彼女が次にどんな事を言いだすのか分かってしまう。
何度も何度もその瞬間に隣にいたクロードだから、彼女が何かを本気で解決したいと思った瞬間が分かってしまうのだ。
強い意思を込めた瞳が輝く。
「あたし、竜を倒したい」
そんな風にお願いされて、クロードという人物が……、イリアの友人である自分が、頼みを断れるわけないではないか。
「ね、クロード。手伝ってくれる?」
「はぁー、仕方ないなぁ」
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