第31話 人が生きる町
海中旅行を終えて、しばらく地上世界の光景を楽しんだ後は、どこかの町へと着陸。
船から降り立ったクロード達は、ジンとアリィの導きで辿り着いた、地上に存在するごく普通の町の前まで歩く事になった。
そこにあるのは、れっきとした人が生活している町だ。
見せかけの、ハリボテの物でもない。
確かな数の人間が生活している事が、感じられる町。
「地上では、人が生きられなくなったって話は嘘なのか?」
イリア達は興味深そうにきょろきょろと周囲を見ているが、クロードは、聞いた話と違うと首を傾げざるを得なかった。
そんな内心に気が付いたようにアリィが詳しい事情を説明していく。
「そういうわけでもないわよ。この地上では、一時期本当に私達人は生きていけなくなったわ。だから竜の目を盗む様にして、地下でひっそりと隠れ住んでいた。貴方達と同じようにね」
なら、なぜこんな風に地上に町を作れるようになったのだろうか。
今度のクロードの抱いている疑問に解答をもたらしたのは、ジンだった。
「それはユーフォリア殿の様な存在がいたからであろうな」
「ユーフォリアと?」
「私、と……?」
思わずクロードは、その言葉を聞きつけたらしいユーフォリアの方へと視線を向けてしまうが、彼女はその事については何も知らないでいるようだった。
もしかしたら馬鹿馬鹿しい理由で突撃を命じられた人工生命体が、彼女の他にもいたのかと思ったのだが違う様だった。
「この地上にも海中都市と同じように、竜に対抗しうる存在がいるという事だ」
「まさか遺伝子を……」
抱いた危惧をそのまま形にするが、クロードのその発言は強い口調のアリィに寄って否定される。
「違うわ。私達はそんな非道な事をしない。彼女達がそうなったのは、本当に偶然の事だった……」
アリィが説明していくのは、まさしく偶然によってもたらされたものだった。
きっかけは、厳しい背景があっての事。
人々は地下に逃げ数年、太陽の恵みにあずかれず上手く食料が栽培できなくなり、食料難に陥っていた。
だが、そこで終わる事ななく地下の人々がどうにかして生き延びようと考えた策があったらしい。
それは、偶然に近くで弱った竜種を発見し、その血肉を喰らう事だ。
苦肉の策として、同胞たちを殺した竜を食料へと変えた人々だったが、それが思わぬ奇跡を生む事になる。
竜の血を、肉を摂取した人々の体に変化が起きて、再び地上に出て生活できるようになるほどの力となったからだ。
「ようするに、適応したって事なのでしょうね。土壇場における生物の順応力が開花したって言えば身もふたもないけれど。だけど、それでも竜の本体を倒す程じゃなかった。自分達の町を竜種から守るだけで精いっぱい。ユーフォリアほどの力は持ってないの」
それを聞いたイリアは妙な事が気になっている様だ。
「そんな事があるんだ。竜って美味しかったのかな」
「さあね」
膝から崩れ落ちそうになった。
イリアの事だから、美味しかったら食べてみようとか言いださないだろうか。
ただでさえ手に余るのに、これ以上力をつけて貰っては困る。
そう思ってればユーフォリアが不思議そうに質問。
「イリア、お腹すいてるの?」
「あ、そう言えばお昼ご飯まだだったよね。でも地上じゃ、朝だから朝ごはんになるのかなぁ。変な感じ、時差ぼけしちゃいそう」
「あっちは昼だったのに、こっちは朝? そういえばどうしてだろう」
どこまでそれていくのか分からないが、彼女達の話題は空腹についてから、時差の不思議についてに移っていっている。
一応クロードでも説明できない事ではないが、明日になったらきっと忘れてしまっているだろうし、面倒くさくて疲れているのもあったので、何も言わないでおいた。
色々な事が連続して起きたので、そろそろ休ませてほしくなったのだ。
平和なイリア達の会話で思い出したのだろう。
アリィが今気づいたかのように話す。
「ご飯は食べないといけないわよね。ジン、どうする」
確かにそれも気にするべき事なのだろうけれど、この状況でどうなのだろうか。
「とりあえず、体を休めるべきだろうな。集会所に開いている部屋があるから、使わせてもらおう」
「そうね」
彼女等の方を窺えば、話しはそんな感じでまとまったらしい。
色々聞きたい事も知りたい事もあったが、今詰め込まれても、理解できる脳みそを用意できる自信がなかった。
「お喋りはお終いね。とりあえず、集会所へ案内するわ、普段私達が色々な話し合いをする時の場所なの。似たようなものは貴方達の世界にもあるでしょう? 話はその後で」
「助かるよ」
「ちょっと、疲れてきちゃったもんねー」
「私も」
竜種との初戦闘に、人探し、おまけに治安部隊との戦闘、そして鬼ごっこだ。
これ以上連続で何か来られては身が持たない。
今すぐ横になりたい気分だった。
だというのに……。
「でも、その後は町の探検したいなぁ、駄目かな」
「イリア、君ほんとは元気だよね?」
疲れたと言った口でそんな事言うもんだから、呆れてしまったではないか。
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