第11話 成り行き
ミクルア森林 内部
そんなこんなの成り行きがあった後、僕らは森の中へと足を踏み入れる。
鬱蒼とした草地をかきわけながら、フィリアが使っている道を見つけて奥へ。
時折獣に遭遇するけれど、相手にはしなかった。
向こうがこっちの存在を察知した途端逃げていくし、威嚇用にもらった爆竹を鳴らせば一部の好戦的なのを覗いた大抵の動物はさっさと奥へ引っ込んでいくからだ。
大人しくない部類の奴は、まあ適当に相手をして格の違いを思い知らせといた。
だが、正直面倒臭い。
フィリアにはそれなりに護身術の訓練を受けている恩があるから、何かを頼まれたら無下にはできないのだが、それにしたって面倒臭い。
竜種の討伐なんて、何の準備もなく人に言い渡すようなものじゃないだろう。
「はぁ、今から家に帰ってふて寝したい気分だよ」
「もう、クロードってば、さっきからそればっか。元気出しなよ」
「出せる気がしないよ」
逆にどうしてイリアはいつもそう、元気に満ち溢れてるのだろう。
特に良い事があったわけでもない時だって、絶えず笑顔だし。
もはや、人類の神秘ですらある。
「なーんか、失礼な事考えられてる気がする」
「気のせいだって」
変な所で勘の鋭いイリアを誤魔化しながら、密林の中……フィリアに教えられた竜種の目撃情報を頼りに進んで行く。
「でも、フィリアさん。何で私達に頼んだんだろう」
「何でって、自分がやりたくなかったからじゃないの?」
「うーん、ありえそうだけど。そうかなぁ……」
イリアはイリアなりに今回のことについて考えてはいたようだ。
確かに、よく考えてみると少しおかしいような気もする
フォリアは基本的に無茶ぶりだし、むしろ存在自体が無茶の領域だが、それでも自分ができる事を人もできて当然だと押し付ける様な事はしない。
今まで、竜種の討伐もした事のないクロード達にそんな事を任せるなんて、おかしいのだ。
そもそも、フィリアが前の仕事を辞めた際に森の近くに居を構えたのは、竜種が町にやってこないように見張るという目的があったからなのだ。
「何か、企んでるのかもしれないな」
「だね! 面白い事だったらいいな」
一瞬のタイムラグも思考の様子もなく離れたイリアの言葉に、クロードは思わずその場でこけそうになった。
これまでの会話を省みて、どうしてそんなセリフが出てくるのだろう。
「どうしたの?」
「何でも。どんな時でも、前向きなイリアが羨ましいよ」
「えへへ」
半分誉めてないんだけれども、彼女にはそんな遠回りな説明では通じない。
だからと言って別に理解してもらいたいかと言えば、そうでもないが。
「クロード、後ろ向きでいたってしょうがないよ。どうせやるなら、前向きで頑張ろっ」
拳をあげて、ガッツポーズをするイリア。
そういう事言うイリアは、クロードの前を歩いていて後ろ向きで歩いているわけだけど、この流れでよくあるオチみたいなのつけないでほしい。
「わわぁっ!」
が、イリアはちょうどよく足元で出番を控えていたらしい木の根につまずいてしまった。
(あーほら、やっぱり転んだ)
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