第400話 恋の行方③
「その後、どうなったんだ?」
小清水さんが何らかの返事をしたのか、それとも、ヒカルが何か和田くんに言ったのか、気になってしょうがない。
そして、和田くんが好きなのは、本体の小清水さんではなく、不良少女のヒカルの方だ。そもそも和田くんとの出会いがヒカルの方だった。
和田くんはどちらに告白をしたのだろう?
「あいつ、オレじゃなくて、沙希の方に告白をしたんだと思う」ヒカルは記憶を探りながら言った。
その言い方は決して望まれた告白とは言えない口調だった。
もしかして・・
僕は小清水さんに言ったことがある。
「僕は、水沢さんを好きなんだ。だから、僕は誰ともつき合えない」
僕は小清水さんにショックを与えるべくして言った。
「小清水さんが、僕を好きだとしても・・小清水さんとつき合うことなんてできないし、好きになることもできない」
そんな残酷なセリフを言ったのには理由があった。
それは、小清水さんの多重人格者を呼び出し、小清水さんから手を引く・・つまり、消えてもらうことをお願いするためだった。
僕は医療的なことや心理療法などは分からないが、その時の僕にはそれくらいしか思いつかなかった。
そして、次の瞬間、小清水さんの人格が回転するように不良少女のヒカルや超文学少女のミズキとなった。
この時も同じだった。小清水さんの受けた衝撃による反応の結果として人格が入れ替わったのだ。
そして、今回の告白の結果はどうなったのか?
それはヒカル曰く、「沙希は返事をしていない」と言うことだ。
なぜなら、小清水さんが返事をする前に、人格がヒカルに移行したからだ。
ヒカルはそう言って、
「鈴木なら、それがどういう意味か分かるだろう?」と言った。
痛いほど分かる・・
つまり、和田くんの告白は小清水さんにとって望まれるものではなかった。
だが、小清水さんは和田くんの気持ちを大事にしたいという心があった。
小清水さんの中で二つの心の葛藤が生じ、揺れ動いた。
そして、その葛藤をするには小清水さんの心の許容量は小さすぎた。それ故に、バトンタッチするように小清水沙希という女の子からヒカルに変わったのだ。
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