第104話 「鈴木くんだけが、私を好きじゃない」②
「他の子は、何か別の・・男子特有の・・ちょっと言いにくいんだけど・・そんな別の目的で近づいてくるの・・でも、鈴木くんだけが、私を純粋にクラスメイトとして見てくれた」
そんな説明をする水沢さんに、
僕は頭を掻きながら「そ、そうかな、僕、そんな風だったかな?」
何を照れてるんだよ! 照れている場合じゃないだろ。
これは・・
一つ考えられるのは、水沢さんが人の考えていることがわかるというのは、ただの妄想、いや、幻想だということだ。
それしか考えられない。
だって、僕は初めて出会った時から、水沢さんのことを思い続けてきたのだから・・
ああ、どう説明したらいいんだ。この感情はどこへ持っていけばいい?
「水沢さん・・か、勘違いかもしれないよ」
「鈴木くん、何が勘違いなの?」
水沢さんは素敵な笑顔でそう言った。幼い頃のいやな思い出を語っていた水沢さんとは違って気が晴れたかのように見える。
「僕もただの男子高生だ」
ああ、僕は何を言っているんだ。口が勝手に動く!
「僕も、他の男子と同じように、イヤらしいことを考えているかもしれないよ」
そうだ。僕はただの男子として水沢さんを見て、そして、恋している。
そして、イヤらしいことも考えている。
だが、そう言った僕に対して、
水沢さんは首を振って、「違うわ」と言った。
「だって、鈴木くんの目は私を素通りしているんだもの」と、また笑みを浮かべながらそう言った。
「素通り?・・」
「そうよ・・素通り・・私を見ていても、鈴木くんは別の子のことを考えている・・そんな気がするの」
別の子?
「どう・・けっこう当たっていると思うわよ」
そう断定するように水沢さんは言った。「鈴木くんは、もっと遠くの女の子を見ているのね」
別の人・・遠くの人
思い当たらないこともない・・
それは、妹のナミが引っ張り出してきた詩集のモデル、
真夜中の夢・・草原の向こういる少女・・
もう一人の純子。
だが、それはもう終わったはずだ。
とっくの昔に心の奥底に仕舞い込んだはずだ。
僕が今見ているのは水沢純子だ。
でも、水沢さんは言った。
「鈴木くんは別の子のことを考えている」と。
これって、水沢さんにふられたっていうことなのか?
いや、僕が水沢さんの恋愛の対象外になったことを意味するのか?
けど、僕は・・水沢さんのことをもっと知りたい。
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