第52話 鈴木家大パニック③

 どんな風に見えてるんだ? 

「影が薄く見えたんだろ?」

「違うの・・そ、その・・服が薄く・・」

「へ?」

 全く予想外の答だった。

「兄貴の服が薄く見えて・・そ、その・・体が、透けて見えてんの」

 服が? つまり、僕は妹の前で、まる裸状態? それもまずいな。

「おまえ、影が、って・・叫んでたじゃないか!」

「だって、そのセリフ、兄貴がいつも嫌がるから、つい口癖で・・」

 そういうことか。

「兄貴、何か、変な服を着てるんじゃないの? 薄い服とか?」

 ウスイ服って何だよ・・何か、話が変な方向に言ってないか?


 もうこうなったら!

「ナミ、よく聞けよ」


 ナミは若い・・というか、まだ子供だ。それに夢見る年頃だ。節操はないが。

 心に柔軟性もある。ある程度は僕の話を理解できる・・そう思う。


「実はな・・この体を透明にすることができるんだ」

「だからさあ・・うすい服なんなんだってば」ナミの怒り口調。

 上手く説明ができないな。

「お母さんには見えて、ナミには服が透明に見えるようにできるんだ」

 ダメだ。どう話したらいい?

「だからあ、透明じゃないし!」

 話が噛み合わない。

「・・・うーん・・オレはな・・ある日、体が透明になることに気づいたんだ」

 話を順序立てて、ナミに説明し始めた。眠くなるのを我慢すると透明になることとか、母には見えることとか、

 話を聞き終えると、それまで我慢していたのか、

「兄貴、私をバカにしてんの?」と吐き出すように言った。

 やっぱり、ムリだあ!

「そんな話、信じれるわけがないじゃん!」と言って「やっぱり、私の目がおかしいんだ」と言った。

「わかった、わかったよ・・ナミ、明日、目医者に行くんだろ?」

「行くよ・・行くけど・・・うーん・・何か納得できないなあ・・」

「何がだよ」

「これから、コンタクトにしょっかな」

「ああ、そうしろ」

 僕がそう投げやりに言うと、ナミは部屋を出ていった。

 僕もこれからナミの前では透明化・・いや、服が透明にならないように気をつける。

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