美幼女と《悠久》の第二学院京都校、《最強》の第一学院東京校
第36話 はぐれ美幼女が、仲間になりたそうにこっちを見ているっ!
お、俺は……
「悪魔や妖怪の類かもしれない」
ハイ、ソコッ! いきなり何言ってんだ見たいな顔しない!
とうとう気がふれたか的な感じで、指さして笑わない!
結構これでも
「情けなっ。何のために水脈橋くんだりまで来たんだか」
説明しよう!
吸血鬼や悪魔、ゾンビー的なものはホラ、教会的な聖域に弱いだろう?
それとおんなじ。水脈橋に到着してから、気分が優れないのなんのって。
きっと俺も実は、水脈橋(限定)が弱点な、悪魔や妖怪の類に違いない(んなアホな!)。
今日この街に来たのは、今年度のいつぞやに来る、魔装士官学院全校による交流競技会抽選会の為。
ま、いわゆる全国高校園球児の祭典みたいなあんなノリよ。
全国で九校ある魔装士官学院。これを二ブロックに分けるんだと。
小隊でのトーナメント大会だの、各学院総動員した模擬戦争だの。
まぁ、競技は色々あるらしいが、その相手決めのクジを引く。そのために今日来ましたよってのに……
「ハハ、会場入りせず、出入り口前のベンチで休んでる俺ORZ」
水脈橋に到着したばかりでリィンに心配されてしまったから、何とかごまかしてみたはいいものの。
この会場までの十分の道のり。一歩アスファルトを踏みしめるたびに体は重くなり、力が抜けていく気がして、ぶっちゃけ参っていた。
うん、やっぱり俺は、水脈橋(限定)が弱点な、悪魔や妖怪の類に違いない(んなアh……以下略)。
「本当、リィンにゃ悪いことしちまったなぁ。《主人公》と俺の二小隊長が、三縞校三年三組の代表として、この抽選会に送りこまれたってのに……」
聞いてくださる?
対異世界脅威関連の魔装士官学院は、全校ともに数年前にできたこともあって、
んでもって、そんな学生が全国的に交流し、高めあうための競技会っていうんですから。もうお世辞なしに、この国の異世界脅威防衛を左右するイベントなんですって。
「うんげーお偉いさんまで来てるっつー話も。えっと、なんつったっけ? なんちゃら……忠勝長官。《対転脅》室長の」
はい、そんなお偉いさんも、抽選会に出席しているんですのよ?
……そして、そんな大事な場に、三縞校三年三組代表、山本小隊の隊長が、体調不良で欠席(会場まではたどり着いたってのに)。
今回抽選くじを引くのはリィンだ。そして彼女は……
「俺の小隊にいるってだけで、身分は逆地堂看護学校二年生なんだよなぁ……」
他校の生徒さんに、僕の代わりを務めていただいております。
「恥じゃねぇか。
あぁいたたまれない。思わず掌で顔を覆っちゃう。
「って……ん?」
人の気配……てぇのは、当然か。今日この会場は、良く人が集まる場だもの。
誰かの視線を感じ、その気配の元に目を向けた。
「……幼女Aを発見。もとい、幼女Aが仲間になりたそうな目でこっちを見ている」
ハイ、自信過剰乙。
いやね? サラサラとした金糸のような長い髪。雪のようにきめ細かい肌。纏っているのは白いワンピース。少しソバカスが浮いているが、却ってチャーミングさを感じさせる幼女が、俺を見ているってのは事実だぜ?
そこだけは妄想じゃないからっ!
過剰乙ってのは、俺の仲間になりたいがために見てるわけがないはずってこと。っていうか、仲間にしちゃだめだろうよ。
「十歳も行っていないか?」
十八歳が、八、九歳の幼女を仲間に迎え入れる。フッフー。犯罪の匂いしかしない。
しない……のだが。
「なんつーか、いたたまれねー」
ジィっと、幼女は無表情で、ただ見つめてくる。
そこに得も言われぬ気まずさが漂った。
(どーして俺、注視されているのか)
試しに周囲に目をやってみた。周りには誰もいないから、やっぱり幼女Aは俺のことを見ているらしかった。
(なんだってこんなガキがこんな場所に? あれか? 親が今回の抽選会の関係者で、娘を連れてくるなりはぐれたってやつ? まさか迷子ってわけじゃ?)
「ええっと……」
ふと、そんなことが頭によぎってからは、無性にこの幼女が心配になった。
さっきも言ったが、ソバカスはチャームポイントとして、幼女の魅力を数割増しにする武器となっている。
それゆえか、俺から見て幼女はとんでもなく美幼女(おいおいシッカリしろ俺! 犯罪だぞっ!)。
保護者がいないことをいいことに、変なことに巻き込まれないか不安(俺こそがその変なことの当事者に成り兼ねないとかいうツッコミには全力で無視)になった。
試しにチョイチョイ、と手招きをしてみる。釣れた。
無表情な幼女は、俺を見続けながら、パタパタと足音をはためかせて近づいてきた。
「迷子か?」
第一声。幼女は首を横に何度か振った。
「誰かと一緒に来ているとか?」
第二声、今度は首を縦に振る。
「はぐれたのか? なら、一緒に保護者を探してやるけど?」
三声に対しては、だんまりしたまま俯いた。
ちょっち……おかしいよね?
いくら幼女たぁ言っても、十歳近いのは見受けられる。それなのに……
「しゃべれないのか?」
幼女は俺を見上げて、口をカパッと開けて、つぐみ、また俯いた。
口をきこうとして声が出ないのか、喋ってはくれなかった。
(あ、知らない人に話しかけちゃいけませんってやつぅ? それならお兄さん、心がポッキリ行っちゃいそうだよ)
「さぁて、どうすっぺかなぁ」
冗談は抜きにしよう。
だったら、幼女は俺に視線をくれないわけで、手招きに応じたところに、幼女なりの意図があるはずで……
グゥキュルキュルルル~
袋小路に入り込んだかもなぁんて思ったところだ、盛大になったのは、幼女の腹の虫。
普通の女子なら恥ずかしがるところかもしれないが、それで表情を変えないのは、恥じらいを知るところまで、年齢を重ねていないからなのかもしれないが……
「腹、減ってんの?」
なんとなしに聞いてみた。効果はテキメン。
無表情には変わりない。が、俯いた視線は顔がクイッと上がり、俺を見つめてきたところに、その問いが肯定であることを示したようだった。
「ラーメン食いに行く? カレーとか」
が、またもや幼女の反応は謎だった。
ラーメンやらカレーなんて、日本人にとっちゃ五十音図と同レベルくらいの常識単語のはずなのに、やっぱり無表情のまま首を傾げた。
「あぁ、飯だ飯。ズゾゾーっていうか、ゴクゴクっていうか。ハハッ、カレーは飲み物かってな」
顔立ちは日本人そのもの。
だが、俺の周囲にはパー璧日本人なのに、髪色が色々な奴らが多いから、幼女のことも気にならない。
日本語、通じるはずなのに、ところどころ首をかしげるから、ジェスチャーを見せてやって、幼女もやっと理解したように、コクコクと頷いた。
「本当は抽選会が終わってから、リィンや《主人公》たちと、遅い昼飯を食う予定だったけど……」
このままこの娘とよくわからない空気を共有するってのもぶっちゃけ辛い。
だから、俺はベンチから立ち上がった。
「行こうぜ? しかたがねぇから奢ってやる」
立ち上がって、ちょっとだけ笑って見せて、会場の外、見覚えがありそうでない、水脈橋の街に出ることにした。
パタパタとなる足音。幼女も俺の後をついてきているらしい。
「……誘拐犯とか、後で間違われないよな」
ちょっとばかり、そんな不安もある。
いや、考えるまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます