12.言刃

怒りやそれに伴う悲しみを こうして言葉に変えるだけのその矛先は いつも鈍ることを知らない

間違っても 怒りとそれに伴う悲しみが 尽きることは書き尽くすまでなく 表立った心情は蔑ろにされない


一言が突き刺さった痕を掻き毟り ひどく出血する

血で血を洗えるほどの鮮血に 思考は後れを取ったばかりか 勢いよく停止してしまった

侮れないその一言とは別に 二言目が放たれる

それが 一言目と同じ場所に深く突き刺さったものだから ひどく動揺する

揺らぎに揺らいだその心情を 支えようとして崩したその体勢の その滑稽さといったらない

非道にもこの機を狙ってか 更なる三言目を受け――


怒りもそれに伴う悲しみも どうして言葉に変えるだけで満足できるだろう いつかそんなことを思った

間を置かず 怒りにそれに伴う悲しみを 重ねるように折り重ね 裏切った思考の言い分をその頂で聴いた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る