4.十分の一

絶対に死ぬと感じられる そんな九死に一生の出来事の最中に考えるのは 数秒後確実に死ぬという事

誰かの顔が浮かぶ事も これまでの人生がよぎる事もない

ただ死へと一直線に続く坂を転げていく事に 無力さを感じるだけである


結果として助かっても 一度死んだ事に変わりはない

なぜ助かったのかという事よりも なぜ死ななかったのかという疑問の方が こうしていつまでも残る


それでも 胸を撫で下ろした事に変わりはない

夢の中で死んでも 現実で死んでも 助かった事を喜ばない訳がないのである

安堵し やっと誰かの顔が浮かび その背景として それまでの人生がよぎるのだ


九死に一生の出来事に「見舞われる」か「立ち会える」か その受け止め方は自由とされている

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