魔王のプライド

(レベル106325?私の倍もあるんだけど?おかしくない?私も何百年単位でレベル上げをしてようやく5万に到達したのに、十数年にか生きてない人間がどうして私よりも倍もレベルが高いわけ?意味がわからないんだけど)


 そうして最初は意味が理解できず、状況を飲み込めていなかった段々とことの重大さを理解した。


(ま、まさかそんなわけあるわけないじゃない。きっと高度なスキルでレベルを偽っているのよ。きっとそうに違いないわ)


 そう思い、魔王は何度もスキルを使って調べたり、その偽りを解こうした。


 しかし何度やっても結果は変わらなかった。


(そりゃあ、そうよね。もしスキルで偽っている場合、レベルは私の方が高くなるわけだから、スキルで見抜けないわけがない。つまり、今見ているレベルが実際のレベルになるというわけだ。ははっ……って、そんなこと考えている場合じゃない!)


 魔王は1人で自己完結し、現実から目を逸らすことをやめた。


(今はどうやれば死なずに切り抜けられるかを考えなければ。女の2人は問題なくすぐに倒せる。なんなら弄ぶ余裕すらあるだろう。しかし、あの男はどうすることもできない。こちらが少しでも殺意を向けただけですぐに殺されてしまう。それくらい圧倒的な実力差がある)


 そう考えた魔王は一つの答えを出した。正確にはそれしかこの場を切り抜ける方法がなかった。


「何でもするのでどうか命だけは助けてください!」


 土下座しながら魔王はそう言った。つまりは命乞いである。


(死ななければ、世界を私のモノにできるチャンスなんていくらでも巡ってくる。だから封印も受け入れたのにここで死んでしまってはそのチャンスが一生巡ってこなくなってしまう。そのためプライドとかそんなこと気にしてはいられない)


 生きるため、自分の野望を達成するためにはこの方法が1番適していた。


(危険なのは目の前にいるこの男だけ。つまり、この男が死ぬまで後80年程従っていれば良いというわけ。その後、すぐに行動起こせば良いのよ。今まで何百年封印させられて我慢していたと思えば、後100年足らずなんて誤差でしかないわ。それに時間ができたと思えば、いろんな準備もできる。そう思えば、悪いことだけではない、はず。だから人間に従うなんて全く屈辱ではない……いや、それは言い過ぎね。人間に従うなんてこれが最後よ)


 人間に従うと見せかけ、魔王は野望を捨ててはいなかった。

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