第53話 エシルの初依頼 3

 帰りは依頼が終わったことで気が緩んだのか、行きよりも会話が増えた。


「依頼って人をつけたりするの?」


 今回のことで打ち解けてエシルの口調が少しだけ柔らかくなった。


「普通は初依頼とは言え、1人にここまで人をつけたりはしないよね。何かあったのかな?」


「ああ、それは僕たちがやらかしたからだね」


 思い当たる節があったエクスはそう答えた。


「ふぇ?そうなの?」


 まさかエクスからそう答えがあるなんて思ってなかったレイは変な声をあげた。


「そうだね。ルクセンとエーシェの3人だけで今日と同じようにゴブリンの討伐に来ていたんだけど、あまりに簡単すぎて調子に乗った結果、ゴブリンの巣にまで入り込んじゃって、ルクセンが大怪我を負うってことがあったからね。それが原因じゃないかな」


「ゴブリンの巣って、Bランク以上の依頼じゃない!Cランクが行くなんてありえないよ!何考えているのよ!」


 レイにはすごい剣幕で怒られてしまった。


「ご、ごめんなさい」


 レイの圧に負けてエクスはそう謝っていた。


 エシルはこの時、思うことがあったのか静かにしていた。


「私に謝ってどうするのよ。それでその巣はその後どうなったの?アシルたちが殲滅したの?」


 レイは呆れながらそう聞いた。


「いや、僕たちが殲滅したよ」


「はあ?!殲滅した?!」


「う、うん。囲まれていたし、ルクセンも怪我してたから逃げるのが難しくてね。それにボスっぽいゴブリンを倒したらゴブリンたちも動揺していて、動きが鈍ったからその隙にゴブリンたちを減らしていったなんとか脱出できたんだよ」


「私でもゴブリンの巣の依頼は躊躇うのに。よくそこに行ったわね」


 レイはまたしても呆れながらそう言った。


「お兄様、レイの言う通りです。余裕だったとは言え、わからないことも多いんですから、そんな無謀なことをする必要はなかったんですから、もっと身を大切にしてください」


 普段全肯定のエシルも今回ばかりはそう言った。


「うう、ごめんなさい」


 エシルにそう言われると思ってなかったエクスはダメージを負い、素直に謝った。


 エシルの依頼のはずがいつの間にか、エクスが反省するというおかしな展開になっていた。


「エシルこんな無謀な人になってはダメですよ」


「はい、死んでしまったは意味がないですからね」


 普段は険悪な2人なのに何故か今日は息が合い、エクスが責められるという状況になり、エクスは居心地が悪くなり、早く帰りたくなった。

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