第49話 エシル入団 4

「うわあぁぁぁん!」


 模擬戦が終わるとレイ泣き出すと何処かへ走り去ってしまった。


「お、おいっ!待て——」


「今は1人にしておいてやれ」


「……」


 エクスは引き止めようとしたが、アシルにそう言われてしまい、それ以上何も言えなくなってしまった。


「2年も年下の上、レベルも経験でも勝っているはずなのに負けたんだ。何を言っても慰めにならないよ」


「「「……」」」


 その言葉に誰も言い返すことが出来ず、全員が黙ってしまった。


「それはそうと、なんでレイに勝てたんだ?元とは言えレイもトップギルドにいたわけだし、スキルも優秀だ。それにレベルは倍近く離れているし、勝てるとは思えないんだけど?」


 アシルは話題を変えるため、エシルにそう話を振った。


「え?あ、はい。それは多分、スキルの使い方の差だと思います」


「スキルの使い方?それなら実戦もしているレイの方が上手いと思うけど?」


「あ、いえ、実戦での使い方ではなく、鍛える時の使い方です」


 エシルはエクスのことになると暴走するが、エクスが絡まなければ、丁寧な受け答えは一応できるのだ。


「それはどう言うこと?」


「はい!私は早くお兄様に追いつくために1日15時間以上鍛えてますから!」


「15時間?!」


 さすがのアシルもその時間には驚きを隠せなかった。


「エシル!」


 それはエクスも同じであり、ついエシルの名を叫んでしまった。


「何ですか、お兄様!」


「おまえはなんて無茶をするんだ!」


「え?」


 エシルは褒められると思っていたため、怒られるなんて予想もしてなかったため、驚き固まってしまった。


 それからエクスはエシルをしかった。それは無茶をしていたエシルが心配だったためだ。


「…ごめんなさい」


 エシルはただそう謝り続けていた。


「はあ。もう、無茶はするなよ」


「はい」


 そうして説教は終わった。


「でも、どうやって15時間も鍛え続けたんだ?」


 それは純粋な疑問であった。15時間も鍛えるなんていくらなんでも無理だと思ったからだ。


「それは、再生っていうスキルを使ってますから」


「再生?」


「はい。再生は自分の自然治癒能力を高めてくれるスキルで体力も魔力も使ってもすぐ回復するので、15時間も鍛え続けることができるんです。それにこのスキルを使って鍛えると魔力操作も上達するし、魔力総量も増えるので、かなり便利なんですよ」


「ははっ」


 エクスはエシルのおかしさに乾いた笑いが出た。


 ちなみにエクスはスキルを使わずに10時間前後鍛え続けていたりする。エクスも説教できる立場ではなかったのだ。

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