第28話 決勝 3

 詠唱が終わり魔法がエクスを包むと同時にその爆風はレイの方にまでおよび、レイは場外まで吹き飛ばされてしまった。レイは吹き飛ばされて負けになってしまったが、そもそも「フラムプロード」が使用禁止の魔法であったため、失格となっていたので、それは気にしていなかった。


 レイは魔力を使い過ぎてしまったため、意識が飛びそうになっていた。


 しかし、エクスの結末を見るまでは倒れるわけにはいかず、必死に意識を保っていた。


『レイの魔法によりステージの様子はわかりません!この場合どうなるのでしょうか!?』


『使用禁止の魔法を使ったレイは失格となるでしょう。それよりも、エクスの安否の方が気になるところです』


 実況であるように、辺りは土煙と爆煙で見えなくなっていた。


「ははっ、これで私の、勝ちだ。この魔法、を喰らって、無事、のはずが、ない」


 煙が晴れるのを待っていると、レイは少しずつ冷静さを取り戻していった。


(あれ?勝つってどう勝つんだろ?だってこの魔法使ったら、Bランクの人でも大怪我を負うのに…)


 レイは、自分のやってしまったことを後悔し始めた。冷静に考えれば、Bランクの人が大怪我をするのなら、Dランクの相手なんてどうなってしまうのか、簡単に想像できる。


 そして、その想像をしたレイは相手の無事を考えるようになっていた。


 だんだんと煙が晴れていき、人影が見えるようになってきた。


『ようやくステージが見えるようになってきました!』


『なんと!エクスは服はほとんど無くなっていますが、身体の方に怪我は見当たりません!』


 煙が晴れ、エクスの無事がわかると会場からは安堵した声が聞こえてきた。


「よかった…」


 レイからもそんな声が聞こえた。そして、レイはこう続けた。


「どうやったら、勝てるのよ」


 レイは自分の使える最大の魔法を使って失格したにも関わらず、エクスにはダメージを負わすことができなかったことが悔しかった。そう言うとレイは意識を失った。


 一方、エクスはレイの魔法をまともに喰らったが、あまりダメージがなく、少し戸惑っていた。それはレイが最大の魔法を打つみたいに言っていたし、実況や観客からも静止の声が聞こえたからだ。

 

 しかし、実際にダメージは大きくない。ダメージで言えば、アシルやナティと戦ったくらいのダメージ量ではある。


 そう思えば、レイの魔法は強かったと言えるが、エクスからすれば、立っていられないこともない、そんな程度のことであった。


 そして、エクスは少し寒く感じ、体に違和感があり、自分の姿を確認し、悲鳴を上げた。


「ぎゃあぁぁぁ?!」


 それは服が跡形もなく吹き飛んでおり、自分の裸体が観客に丸見えになっていたからだ。


 すぐに体の局部を腕で隠し、その場に蹲った。


 救助がすぐに来て、布を掛けてくれた。エクスはそれだけでもありがたかった。そして、その布で体を隠しながら、場外へと消えて行った。

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