持っていてはいけない恩恵『経験値増加』を持った男

神谷霊

プロローグ

 私は今の状況を理解することがまだできていなかった。

 

(どうしてこうなった?)


 私の目の前には広場を埋め尽くす程の人間が集まり、私が現れるのを待っていた。そして、私が現れると一斉に歓声が上がった。


(もう一度言おう、どうしてこうなった?)


 私が人間ならば、こうなることも想像できる。


 だが、私は魔族だ。しかも魔族の長、つまりは魔王である。


 そんな魔王である私が今、人間たちに歓迎され、迎えられている。どう考えてもおかしい。


 まあ、別に今の状況が嫌と言うわけではない。見方を変えれば、人間を従えている状況だ。むしろこの状況は私の目的である世界征服の一部を達成している。


 だが、やはりこの状況は少し納得できなかった。魔王である私が好意的に迎えられるというはやはりおかしい。それにある男さえいなければ、今頃、人間たちを恐怖によって支配できていたはずなのだ。そう考えるとこうなった元凶の男が憎くなった。


 私はこうなった元凶の方を向き、その男を睨んだ。しかし、その男は睨まれても気にも止めず、無関心そうにこちらを見返してくるだけだった。

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