第11話 zerosama yurfa 女神の言葉
飢えには慣れている。
だが、もちろん空腹は好きではない。
固い黒パン、薄いスープ、そして小さなチーズ。
粗末な食事であっても食べたいと思った。
子供の頃はいつも飢えていた。
そして「お母さん」に拾われて状況は変わった。
'
「お母さん」は言った。
"
「お前はとても幸運だ。だからお前の名前はエルミシアだよ(訳注 elmisは幸運の意。-iaは女性の名前に多い)
少女は「エルミシア」になった。
エルミシアは「お母さん」が本当の母親ではないことに気づいていた。
本当の母親を知らなかった。
エルミシアはたくさんの他の女の子たちや「お姉さん」たちと大きな木造の建物に住んだ。
いろんな「お姉さん」がいた。
「お姉さん」はみんな化粧をして男の人たちと狭い部屋に入った。
'
エルミシアはたくさんの仕事をし続けた。
掃除、洗濯……いっぱい働かなければならなかったのだ。
でもエルミシアは飢えなくてすんだので満足だった。
化粧をした綺麗な「お姉さん」に憧れた。
ときどき病気になった「お姉さん」がどこかに消えた。
成長した少女は新しい新しい「お姉さん」になった。
やがてエルミシアの順番がきた。
だが少女は自分が「幸運」ではなかったと知った……。
"
「目が醒めたか?」
誰かが言った。
ここはひどく狭いところだ。
"
「エルミシア?」
少年の声が聞こえた。
"...
「……シュルトス?」
"
「そうだ」
あたりはひどく薄暗い。
"
「悪い夢でも見ていたのか?」
"ne...
「ち……違うわよ!」
エルミシアは笑った。
昔は幸運ではなかったかもしれない。
だが今は私は幸運なはずだ。
なぜなら私はエルミーナの尼僧なのだから。
エルミシアは昨夜の出来事を思い出した。
シュルトスとウェーラとともに南へ歩き出したのだ。
ここは「黒丘陵」である。
南イオマンテの森と丘陵が存在する地域だ。
昨夜、シュルトスが雪に穴を掘った。
今、エルミシアはそのなかで寝ていたのだ。
まだ朝ではないらしい。
突如、少女の腹が空腹で音をたてた。
"
「腹が減ったのか?」
"ya,
「そ、そうね」
シュルトスがなにかを着ていた毛皮から取り出した。
"
「猪の燻製だ」
また腹が鳴る。
"
「食え」
"
「ありがとう」
エルミシアは猪の燻製を噛み始めた。
ひどく固い。
|now |umega |ci |di:kma |vanumaszo.
しかし肉の旨さを味わえた。
"
「うまいか?」
"
「ええ」
涙が出るほど美味しく感じる。
塩っぱさが素晴らしい。
"
「水が飲みたいか?」
エルミシアがうなずいた。
"
「大丈夫よ。雪を食べれば水分は得られるし……」
"
「駄目だ」
シュルトスが言った。
"
「雪は食べるべきじゃない。体がひどく冷える。これを飲め」
シュルトスは革の袋をエルミシアに手渡した。
"
「水袋だ」
少女は袋から水を呑んだ。
ひどく冷たいが間違いなく水である。
"
「おいしい」
"
「もし空になったら新しく雪を袋に入れろ。自然に体の熱で雪が融ける」
"
「知らなかった……」
"
「朝にここを出る。そして南に向かう」
"
「わかった。私がエルミーナ女神の尼僧になったとき、女神が『南へ行け』って言っていた」
本当だった。
だからエルミシアはイマナールの都から南へ旅を続けていたのだ。
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