松前沙耶

桜スタート

 さあ、ここで質問です。

 桜の花のイメージは?

 私はまず真っ先に、春と答える。だってほら、桜は春に咲くものじゃない?

 そしてその春からさらに連想されるのは、そう、スタートダッシュだ。

 このスタートダッシュは、様々な意味でとても大事になってくる。

 勉強のスタート。友人関係のスタート。いろいろあるでしょう。

 だけどやっぱり私は……。

 私は今まで、割と優等生で通してきた。

 頭もいい方で、実行委員なんかにも積極的に参加する。だから、先生からも信頼を寄せられている。

 でも、新学期になってしまったら、担任の先生も変わる。

 私のことをあまり知らない先生になる。

 だから、春は、担任の先生へのアピールのスタートなのだ。

 でも、そんなことにばかり気を使っているからだろうか。

 わたしはいつも、春に、友達との間でトラブルが起きてしまうのだ。



「ねえさやっちー。宿題見せて」

 ほうら、今日も来た。私の親友の衣緒は、いつもこうして宿題を見せられに来る。

「衣緒ねえ、たまには自分でやってきなよ」

 そう口では言うけれど、内心は嬉しい。

 それは頼られることについてなのか、それとも、それに対する優越感からくるものなのか。

「えー。いいじゃんいいじゃん。ありさっちもそう思うでしょ?」

「え、えと、何?」

 この子はありさ。最近になって仲良くなった。

 正直、ちょっとどんくさいかなとも思うけれど、まあ、構わない。

「馬鹿、ありさだって自分でやって来いっていうよ? ねえ?」

 元気な衣緒と、おどおどしたありさ。

 その二人をつなぐように、私は言葉を発する。

 きっとこの二人は、私がいないと会話を成立させることができないんじゃないだろうか。

 少しだけ、にやりとしてしまう。

 こうして、二人の役に立てていることに喜びを感じる。

 なんていうのは半分嘘で。

 本当は、こうして、自分が完ぺきな人間でいられていることに対して喜びを感じている。

 うん、性格が悪いっていうのは自覚している。

 自覚はしているけれど、直すのは難しい。

 自信たっぷりの裏で、ほんの少しだけ、自分が苦手な私がいる。

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