第15爆弾 アーティクリエイト

 異次元は未だに風も吹かず変化がない。アーティは木の枝や布切れを集めていた。


「これ、何に使うの?」

 アーティは一緒に拾っていたボムの父クエストに聞いた。


「家の代わりのテントとかに使うかな。拠点を作るんだよ!」

「拠点?ここに住むの?」

「しばらくはね。まだ出る方法が分からないから調べないと…」


 クエストは拾ったもので両手いっぱいになり始めていた。


「調査だね!頑張ろっ!」

「そうだな!よし、じゃあ戻ろう」

 クエストとアーティはボムの母リンスのいる場所に戻る。


「ただいまー!ボムママ」

「おかえりアーティちゃん、あなた!」

 帰ったクエストとアーティは集めた木の枝や布切れを地面に置いた。


「よし、これを使って拠点を作るぞ!リンス、この布切れをつなぎ合わせて大きい布を作ってくれるか?」

「つなげばいいのね?分かったわ」

「頼む!アーティはおれと骨組みを作ろう」

「いいよ!」


 リンスが布切れをつなぎ、クエストとアーティが木の枝で骨組みを作ることになった。


「こことここを縛ってくれるか?」

「うん」

 アーティは木の枝同士をクエストが持っていたひもで縛る。


「これでいいの?」

「ああ。いいぞアーティ!」

 その後も同じ動作を繰り返す。


「ねえ、ボムパパ。向こう見てきてもいい?」

 アーティはリンスの方を向いて言った。

「飽(あ)きちゃったか…いいよ、行っておいで!」


 少し距離をあけてリンスは布切れをぬっていた。するとそこへアーティがゆっくりと歩いて来ていた。


「ボムママ来たよ!」

「まあアーティちゃん!もしかして…飽きたんでしょ?」

「そうなの…。ずっと同じことやっててつまんなくなっちゃった…」

「こっちもつまらないと思うわよ」

「いいの。ボムママ優しいから」

「ふふっ…!じゃあちょっと手伝ってくれる?」

「うん、手伝う」

 アーティはリンスに言われて布をぬうのを手伝う。

 そして、遂にクエストとリンス、アーティの3人で作ったものが完成した。


「ちょっと不格好だが、拠点としては上出来だな!」

「そうね。何もないよりはいいかも!」

「3人入る大きさだね!すごーい」

 拠点が出来上がり、その日はそのまま寝ることにした。3人はテントの中で川の字で横になった。


「なんか、家族みたいだね!」

 クエストとリンスの間に挟まれたアーティがしみじみと言った。

「もうアーティちゃんは家族みたいなものよ。ボムと仲良くしてくれてありがとうね!」

「ああ。アーティは4人目のうちの家族だ」

 クエストとリンスはアーティの方に体を向けて言う。

「ありがとう…頑張ってここから出ようね!」

「ああ」

「そうね」


 それから3人は眠りについた。

 次の日、と言っても日が出ることはないのだが。アーティが目を覚ました時、テントの中にクエストとリンスはいなかった。目をこすりながらテントの外に出ると、2人は何かを準備しているようだった。

「おはよう、ボムパパ、ボムママ。何やってるの?」

「おはようアーティ。これはな、調査の準備だ!」

「調査の準備?」

「もっと簡単に言うと地図を作る、かな?」

「地図を作れるの?すごいね!」

「そうだよ。今までにもやったことはあるから慣れたものだよ」


 クエストはまず、自分の歩幅を決めた。大体50センチぐらいの長さを基準にした。それから地面に十字を描いた。

「方角は知ってるか?」

「えっと…東西南北だっけ?」

「そうだ。この拠点の周りの地図を作る。そのためにとりあえずの方角を今決めた」

「それでどうやって地図を作るの?」

「ふっふっふ…少しアーティには難しいかもしれないが心して聞くんだよ」


 クエストは紙のようなものを取り出して広げた。その紙に羽ペンでテントのような図を描き入れた。

「ここが拠点だ。ここから東西南北に歩いて行く、同じ歩幅でな。今日は行き帰りでそれぞれ200歩行こう!そうすると100メートル範囲に十字の地図が作れるんだ。分かるかアーティ?」

「うーん…つまり、沢山歩くと景色が変わってどこにいるか分かるってこと?」

「まあ…大体は合ってるな」

「あたしとボムパパで行くんだよね?」

「ああ。リンスには残ってもらって拠点を見ててもらう」


 そして、アーティはリンスの所へ行った。

「アーティちゃん、はいどうぞ!」

 リンスはクッキーのかけらをアーティに渡した。

「どうしたの、これ?」

「常備食のクッキーが残ってたからあげようと思って」

「でも、あたしでいいの?」

「いいのよ。少しはお腹に入れた方がいいでしょ?」

「うん。ありがとうボムママ!」

 アーティはクッキーを口に入れてゆっくりと噛み、飲み込んだ。

「おいしい!」

 リンスは優しく微笑んだ。


「アーティ、そろそろ行こうか」

 準備ができたクエストはアーティに声をかけた。

「うん。じゃあボムママ、行ってくるね!」

「アーティちゃん、気を付けてね」

「ボムママもね!」

 リンスは静かに頷いた。

「じゃあ行ってくる」

 アーティと荷物を持ったクエストは拠点から歩き出した。

 東西南北のうち、まず東に向かうことにした。


「ボムパパは疲れないの?」

「そうだな…ここから出るからには疲れることをしないと出られないかもしれないな」

 クエストは、ははっと笑った。

「疲れるけど、これまでもやってきたから楽しんでるよ」

「そっか、楽しいなら続けられるね!」

「ああ!」

 2人は50センチの歩幅で歩き続けるのだった。

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