天才か?非天才か?

水谷一志

第1話 天才か?非天才か?

 一

 私は、俗に言う所の「天才」だ。

 特に理数系、コンピューター関連では、私に解けない問題はない。

 私は一般的に難解とされてきた「四色問題」を、若干高校生で完璧に解いてみせた。

 また、この「四色問題」は、とある学者がスーパーコンピューターで解いたのが初めてであると言うから、この件だけみても私の天才ぶりが分かるであろう。

 そして私はそれだけでなく、高校時代に国際数学オリンピックで金メダルも獲得した。またいわゆる「難問」と言われてきた問題も、今まで私は何度も解いてきた。

 あと私の専門は一応数学だが、私はそれ以外にも才能を発揮している。私は高校時代、国際物理オリンピックにも参加し金メダルをとった。

 そう、私に解けない問題はない。世界中の未解決の問題も私にかかれば大したことはない。これから、私はどんどん問題を解いて名声を高めていくのだ―。私はそんな風に思っていた。

 しかし、そんな私に「挫折」が訪れる。


 二

 それは、たまたま中学時代の友人と街で出会った時のこと。

 「○○ちゃんはやっぱりすごいな~!

 そういえば私、将来介護福祉士になろうって思ってるんだ!

 ○○ちゃんからしたら簡単すぎるかもだけど、一応資格取得も考えてるんだよ!」

 …!?

 その時、私の心の中で何かが動いた。

 『介護福祉士…。確かに簡単そうな資格だ。まあ私にとれない資格はない。

 じゃあ暇つぶしにとってみるか。』

 私はなぜかそう思ってしまった。

 そして私は友人に出会ったその足で、本屋に行きテキストを購入する。

 それを家に帰って読んでみたのだが―。

 『む、難しい…。』

 それが、私の初めての感想であった。


 三

 そして私はムキになり、介護福祉士の過去問のテキストも購入する。

 そして勉強をするのであるが、全く内容が頭に入ってこない。

 そして、気になる過去問の点数も―、

 『0、0点!?』

 ―そんなバカな!?

 しかし、問題はマークシートである以上、結果ははっきりしている。

 そう、私は、

 介護福祉士の勉強が「できない。」

 『私に解けない問題はない、はずなのに…。』

 そう、それが私にとって、初めての挫折であった。


 四

 『これは私のメンツにかけて、何としてもこの資格をとらなければ…。』

 私はやけになって何度もテキストを読み返し、過去問を解いたが一向に成績は上がらない。

そんな中、私はふと思う。

 「天才とは…一体何なんだろう?」

 と。

 今回の私のように理数系にめっぽう強くても、介護福祉士の試験のようにできないことがあればそれは「天才」と呼べるのか?

 …さらに私は考える。私のように特定の才能がある人間でも、何かできないことがあればそれは「天才」と呼べるのか?

 結局何でもできなければ、その人間を「天才」と呼ぶことはできないのではないか?

 『いや、今は余計なことを考えている暇はない。

 私は今は資格が欲しい。そして私は何でもできる、私は『天才』であるということを改めて証明したい!

 資格、資格、資格、資格、シカク、シカク、シカク、シカク…!』

 私は必死になったが、やはり成績は上がらない。


 五

 そんな私に朗報が舞い込んでくる。

 何と、次の介護福祉士の試験はweb媒体で受けることができるようになったのだ。

 【私はコンピューターは得意だ。

 次の試験、web媒体でハッキングすれば―。】 (終)

 

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天才か?非天才か? 水谷一志 @baker_km

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