VENTIDUE
*エド視点の一人称→ 三人称になります。
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結局リズは1時間ほど経ってから目を覚ましたの。
眠ってしまう前の自分の発言を全部覚えていたのか、目覚めてから涙目でワタシ達に謝ってきたわ。
気にしなくてもいいのにねぇ。
まあ、そんなところもリズなのよね。
「ちょっと待っててね」
そうリズに言ってワタシはお母様のところへ向かった。
あ、お茶会はもう終わっててローズブレイド兄妹は家に帰したわよ。
「お母様エドです。入ってもいいかしら?」
「あら、あなたがここに来るのは珍しいわね。どうぞ」
お母様の執務室に許可を取って入ると、書類に通していた目をワタシに向けてニヤっと笑った。
「ふふっ…さっきねぇ、ウイリアムが教えてくれたんだけどエリザベスちゃんがまだ我が家にいるんですって?」
「え、ええ、そうなの。それでお母様に相談しようと思って」
「いいわよ」
「えっ」
お母様?エスパーかなー?まだ何も言ってないんだけどー?
「我が家にお泊まりさせるって事でしょう?」
「…なんでもお見通しね… 怖いわお母様…」
「もちろんいいわよ。なんならそのまま既成事実作ってうちの子にしちゃいなさい」
「!!!? おっ……オカアサマ何を…」
動揺しているワタシをニヤニヤと見ていたお母様が、急に真顔になって「冗談よ」だって。
本当に何を言い出すのやら… リズはワタシのかわいい幼馴染ってだけよっ!
いや、マジで妹みたいなもんなんだってば!………本当よ?
「まったく… お母様も人がわるいわね。 ま、それじゃリズにそう話して来るわ。 ああ、ウイリアムにアシュレイド家へ知らせるよう言っておいてくださる?」
「うふふ、エドったら照れちゃってぇ。アシュレイド家ね、わかったわ」
いろいろ言われたけどリズの事は無事許可が取れたし、リズのところに戻ろうかしらね。
廊下を歩きがてら通りかかった侍女にリズが泊まる事を伝えて、部屋と湯あみの準備を指示した。
「リズ待たせちゃったわね。今日はもうウチに泊まっていきなさい。アナタのお家には伝言を頼んであるから大丈夫よ」
「よろしいんですの?」
「もちろんよ。実はお母様ってリズの事相当気に入ってるみたいでね、泊めるって言ったらニコニコと喜んでいたわよ」
「まあ…!おばさまにお礼を言わないといけませんわね。…本当は家に居たくなかったから嬉しいわ。エドありがとう」
「ふふ、いいのよ。うちでゆっくり休んでいきなさいな」
*********
「な…お姉様がエドナーシュ様のお屋敷に泊まるですって?!」
エリザベスの帰りが遅いのが気になったアリサが、アシュレイド公爵家の執事長に尋ねたのだ。
先程オルベール家の使いが来て、エリザベスがオルベール家に泊まる事を門番に伝えられ、門番から執事長に伝えられたばかりである。
「なんでもエリザベスお嬢様がお茶会中に気分が悪くなったとかで、そのまま休ませられるそうです」
「ひどいわ!エドナーシュ様は私の婚約者になる方なのに!…きっと仮病に違いないわ!連れ戻してよ!」
「ですが…オルベール家はこの国の筆頭公爵家ですし、なにより私にそういった権限はございませんので…」
「〜〜〜〜〜〜っ! 何よ、使えないわね!もういい!お父様にいいつけてやるんだから!」
怒りのあまりドスドスとひどい音を立ててアリサがその場を去ると、扉の影からエリザベスの専属侍女であるマギーが出てきた。
「執事長」
「おや、マギーですか。今の話を聞いていたのですか?」
「ええ、エリザベス様は今日お帰りにならないのですね。テレサにもその旨伝えておきます。それよりも…」
マギーは無表情で殺気を若干纏わせながら、コテンと首を傾げて執事長を見た。どうしても聞き捨てならない事を聞いたからだ。
「私の空耳でしょうか?アリサ様がエドナーシュ様の婚約者になると、そう聞こえた気が致しますが?」
マギーからの圧が凄い。執事長の背中にはダラダラと冷や汗が流れる。
まるでへびに睨まれたカエルのようである。
「そ…れは、旦那様がどうも…アリサ様にそう言ったらしいですね… ははっ… 私もね、無謀だと思うのだけどね…」
「そうですか…わかりました」
目が笑っていない笑顔で綺麗に礼をすると、マギーはその場を離れた。
(こわいこわいこわい! あのマギーとテレサの侍女コンビだけはほんと怖い…)
『我らが主のエリザベス様に仇なすものに容赦は無用』の彼女達は、何気に執事長にも恐れられる、アシュレイド家最強侍女コンビだったらしい。
マギーは先程の件をテレサに伝えると「オルデール家にも伝えたほうがいい」と意見が一致し、早速エドナーシュ宛に手紙を
「本当にあのバ…旦那様はろくな事しやしないわね」
「まったく… まあ、あのオルデール家が旦那様の思うとおりにはならないと思うけど…エリザベス様がまたお心を痛めないか、それだけが心配だわ」
**********
同時刻、王都に一番近い町の中を走る1台の馬車があった。
馬車には若く気品のある女性と、お仕着せを着た妙齢の女性が乗っていた。
お仕着せを着た女性が、じっと窓の外を眺めている若い女性に声をかける。
「お嬢様、今日はここで一泊して明日には王都に入ります」
「そう…やっとここまで来れたのね。長かったわ…」
「はい…今日はゆっくりとお体を休めてくださいね。明日から忙しくなりますからね」
「ええ、ありがとう」
(やっと…ここまでこれた… 大丈夫よね。運命はここまでは追ってきやしない…わよね?)
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