26 自由落下(手を差し伸べる)
自由落下(手を差し伸べる)
あらゆる物体は、重力に引かれて、地面の上にいつか落ちる。
朝、輪廻が起床時間に目を覚ますと、ベットの中にもう林檎の姿はなくなっていた。
「林檎? どこにいるの?」
輪廻は言った。
でも、林檎はどこからも、輪廻に返事をしてくれなかった。
輪廻はぼんやりとする頭の中で、……トイレか、お風呂かな? それとも、どこかにさんぽにでも言ったのかも? と思いながら、学校に登校する準備を始めた。
林檎が、この輪廻の家を一人で去ってしまった、と言う事実に輪廻がすぐに気がつかなかったのは、それだけ二木林檎のことを、三枝輪廻が信頼していたからだった。
でも学校に行く準備をし終わって、キッチンでコーヒーを飲んでいるときになって、ようやく、輪廻はことの重大さに気がついた。
よく見ると、林檎の荷物がなくなっていた。(あの小さな四角いピンク色のトランクが部屋からなくなっていたのだ)
そして、ソファーの上には、林檎の使っていた輪廻の制服一式と真っ白なパジャマが綺麗に折りたたんで置かれていた。
そしてその前にある、ガラスのテーブルの上には一枚の白い紙が置いてあった。それは林檎から輪廻に向けた『さよならの手紙』だった。
その白い紙を広げると、鉛筆で書かれた文字で『……ばいばい』とだけ、林檎の輪廻に残したメッゼージが書かれていた。
初めて見る、林檎の書いた手書きの文字。
その文字を見て、三枝輪廻は、その場で泣いた。
涙が溢れて溢れて仕方がなかった。
それから、「……どうして? 林檎? ……私たち、もう友達でしょ? なんで一人で勝手に私の前からいなくなったりするの?」と泣きながら言った。
もう、学校に登校するどころの話ではなかった。
輪廻はもうなにもする気力が起きてこなかった。
林檎を信頼し、いつの間にか林檎に依存していた輪廻は、林檎を失ったショックがあまりにも大きくて、もう、ソファーのところから、立ち上がることができなかった。
そのまま輪廻はしばらくの間、そこで顔を伏せて泣き続けた。
その輪廻の深い悲しみは、やがで深い怒りへと変わっていった。そして、もう林檎なんてどうだっていい!! どこにでも、行っちゃえ!! 林檎なんて、『もう死んじゃえばいいんだ』!! と思った。
その瞬間、輪廻ははっとして、頭をあげた。
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