18

 それから輪廻は、林檎の安らかな寝顔を見ながら、眠りについた。

 輪廻はその日、(隣に林檎がいてくれたからなのかどうかはわからないけれど)すごくぐっすりと、安心して、よく眠ることができた。


 時刻は朝の七時。

 輪廻はいつものように自分のベットの中で目を覚ました。

 いつもと同じ朝の風景がそこにはあった。違うのは、輪廻の隣にはまだ、ぐーぐーと寝息を立てている、二木林檎という名前の、三枝輪廻と同い年の(そして輪廻によく似ている)髪をツインテールにした少女が一人、そこで眠っているということだけだった。

 まだ起きる気配を全然見せない林檎の可愛らしい寝顔を見て、輪廻はにっこりと微笑んだ。

 ……よかった。と輪廻は思った。

 朝起きたら、昨日の夜のことは全部夢で、林檎がどこかに消えてしまっているのではないかと、輪廻は少し心配だった。

 でも、林檎は夢ではなかった。

 蜜柑と檸檬という双子の男の子の兄弟のお姉さんである二木林檎と言う少女は輪廻の見た夢の存在ではなくて、現実の存在として、ちゃんと輪廻のそばにいてくれた。

「ありがとう。消えないでいてくれて」

 そう小声で言った輪廻はそれから林檎の鼻をちょんと指で押してから、ベットの中を静かに抜け出して、昨日、入り忘れた分も含めて(そんなことは普段ならありえないのだけど、輪廻はそれくらい林檎といる時間が楽しくて、また特別だったのだと思った)一人で朝のお風呂に入った。

 それからお風呂を出て、そのまま新しい制服に着替えをして(輪廻は制服の着替えを何着も持っている)部屋の中に戻っても、まだ林檎は眠っていた。


 時刻は朝の八時。

 でも、今日は日曜日であり、学校はお休みなので、登校の時間を気にする必要はなかった。

 それから輪廻が窓を開けて、そしてキッチンでコーヒーを淹れていると、「うーん」と言う声がして、輪廻のベットの上で変化が起きた。

 林檎が目覚めたのだ。

 輪廻が時計を見ると、時刻は八時半になっていた。

 輪廻はコーヒーを入れたカップを二つ持って、部屋に戻った。

「……おはよう、輪廻」まだ眠たそうな顔で林檎は言った。

「おはよう。林檎。よく眠れた?」とにっこりと笑って輪廻は言った。

「うん。よく眠れた」

 と林檎は言った。

 それから林檎は、「うーん」、ともう一度そう声を出しながら、輪廻のベットの上で、まるで本物の猫みたいに、大きな背伸びをした。

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