13
「これ、林檎着る?」
そう言って、輪廻が差し出した服は、輪廻の持っている換えの、輪廻自身の制服の予備だった。
「え? それ、着ていいの?」
林檎は驚いて、そして、それからなんだかすごく嬉しそうな顔をする。
「うん。いいよ。サイズもたぶん、合うと思う」
輪廻は言う。
「ありがとう」
林檎は輪廻から差し出された輪廻の制服を手にとった。
その制服を、林檎はまるで宝物のようにじっと、両手の上に持ってしばらくの間、見つめていた。
それから林檎は体に巻いていたバスタオルをとって、輪廻の前で輪廻の制服を嬉々として身につけていった。
その様子を、輪廻はじっとソファーに座って、コーラを飲みながらずっと見ていた。
輪廻のリビングに電気の明かりはつけられていない。
薄暗い部屋の中に大きな窓から差し込んでくる、白い月明かりに照らされている、林檎の裸は、とても綺麗で、いつまで見ていても飽きないような、そんな美術品のような美しさがあった。
「……どうかな?」
輪廻の制服を着た林檎は黒いカーディガンの裾を掴みながら、にっこりと笑って、恥ずかしそうにしながら、輪廻に聞いた。
「うん。よく似合っているよ」
林檎と同じようににっこりと笑って、輪廻は言う。
すると林檎は「……へへ。ありがとう」と鼻の下を指でこすりながら、頬を赤くして輪廻に言った。
輪廻と同じ制服姿になった林檎は、輪廻の思った通りに、今まで以上に、まるで自分の分身のように似ている、と輪廻が思うくらいに、輪廻の姿にとってもよく似ていた。
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