第10話 運命の青い糸 十

 あと、これは誰にも言っていないことであるが、俺が映像研究会に入ったのには、もう1つ理由がある。

 それは、「映像越しに人を見ると、運命の青い糸が見えない。」ということだ。

 このことに最初に気づいたのは、俺が高校生の時である。その時、俺はたまたま俺の友達のカップルに、

 「克也!俺たちの写真撮ってくれよ!」

と、頼まれた。(もちろんそのカップルにも青い糸があり、その後そのカップルは破局している。)

 『まあとりあえず、撮ってやるか。』

俺はそう思いながら、その友達の携帯で写真を撮った…すると、

 その写真に写っているカップルの間に、糸は見えなかった。

 その後俺は、ある程度の数の(破局する運命の)カップルの写真なり、ムービーなりを撮ってきた。そしてそのどのカップルにも、(実物とは違い)写真・ムービー上では青い糸は見られなかった。

 正直俺はその頃人の「不幸」を見続けることに辟易しており、そんな俺をカメラが「救ってくれた」…俺はそんな風に感じた。

 『カメラ越しになら、俺は自分のやりたいことを、他の人の運命なんかに惑わされずにやることができる…!』

俺の頭の中のどこかにはそんな思いがあり、それが俺がこのサークルに入った、誰にも言っていないもう1つの理由である。(あと、「青い糸」のことは今まで俺は圭太はおろか、

誰にも言ったことがない。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る