翠梟の瞳《すいきょうのひとみ》

夏艸 春賀

声劇台本

《諸注意》

※主人公は性別変更不可。

※ツイキャス等で声劇で演じる場合、連絡は要りません。

※金銭が発生する場合、必ず連絡をお願いします。

※作者名【夏艸なつくさ 春賀はるか】とタイトルとURLの記載をお願いします。

※録画・公開OK。無断転載禁止。

※雰囲気を壊さない程度のアドリブ可能。

※所要時間約10分。基本的にサシ劇台本。祥貴と楊貴を分けて3人台本としても使用可能。



《役紹介》

安良城 誠明(アラキ セイメイ)

主人公、男性、35歳

180cm、黒髪長髪、黒い瞳(左眼は前髪で隠れているが翠の瞳)

旅館『猫屋敷』雇われ主人



祥貴(ショウキ)

見た目20代、不問

155cm、銀の髪に短髪で紅い瞳

旅館『猫屋敷』小間使い

白い梟の妖



楊貴(ヨウキ)

見た目20代後半~30前半、不問

176cm、金の髪に紅い瞳、後ろ髪は尻辺り迄ある

旅館の建っている山の土地神

九尾の狐の妖





《配役表・2人》

安良城(男):

祥貴・楊貴(不問):



《配役表・3人》

安良城(男):

祥貴(不問):

楊貴(不問):






↓以下本編↓

─────────────────────────



安良城M

「山奥にひっそりとたたずむ旅館『猫屋敷』。此処ここには自然を求めてやってくる人は勿論、あやかしと呼ばれるたぐいのモノも集まって来る。人に害を及ぼすモノは少ないが、ごくたまに、人と共にやって来る悪霊もいる。俺はそれらを祓う為にこの旅館に雇われている。」


祥貴

「おい安良城あらき! お前、こんなとこでなぁにしてんだよ。女将が血相けっそう変えて探してたぞ!!」


安良城

「何してるって……縁側えんがわで茶ぁ飲みながら煙管キセル吹かしてるだけだが?」


祥貴

「それだけの為に神隠しの結界張ってんじゃねぇよ! 無駄に力使いやがって。またなんかかれて来てんじゃねぇか! 早く姿見せてやれって」


安良城

「……面倒臭い…」


祥貴

「(被せて) 面倒臭がるんじゃねぇ! お前の仕事の一つだろ? さっさと行ってさっさとはらって来いや!」


安良城

「へーいへい」


祥貴

「返事は、一回で、はい!」


安良城

祥貴しょうきは俺の母親か何かかな?」


祥貴

「〜ッ! さっさと行け!!」


安良城

「あはは、そう怒るな」


安良城M

祥貴しょうきは、俺が若い頃に助けたフクロウ。本人から聞いた話では猟師に撃たれ瀕死ひんしの状態の所を、俺が助けたのだと。確かに俺は梟を助けた。だが今、目の前で声を荒らげているのは人の形をしている。特に珍しいとも思ってはいないが、その記憶は曖昧あいまいにしか残っていない。

 俺としてはいつの間にかかたわらに祥貴がいて、いつの間にか契約がされていた。俺の左眼には、そのいんは確かにあるのだ。」



【間】



安良城

「……どこだよ、ここ……」


楊貴

「……って来た、かと思えば…」


安良城

「{なんだ? あいつ…}」


楊貴

「……ショウ…お主、死ぬのか」


安良城

「{誰かと、話してる……?}」


楊貴

「…死ぬのは構わぬが……随分とけがれを運んでくれたのぉ。……お主の生命いのち一つでは足らぬぞ?」


安良城

「{ケ、ガレ?……確かに鬱蒼うっそうとしてる森だが、よごれてる様には見えん…}」


楊貴

「のぉ、小童こわっぱ。こそこそとしとるそこの小童…」


安良城

「{小童?}……て、俺の事か。やっぱりバレてたのか」


楊貴

わらわが気付かぬとでも?」


安良城

「…だ、よなぁ。……て、…そいつは…!」


楊貴

「嗚呼、妾の生きるかて


安良城

「生きる、糧?」


楊貴

「嗚呼……人間、どもは、食事と言うのかのぉ。…此奴こやつ、妾の事を態々わざわざ探し出し、此の場で力尽きようとしておる。元は清浄せいじょうなこの山に巣食っておったふくろうじゃの」


安良城

「…は?……にしても、傷だらけじゃないか。手当してやらないのか?」


楊貴

「して、どうする」


安良城

「助けるんだろ?」


楊貴

「妾の生きる糧と、言うたろう?……喰らうのよ」


安良城

「まだ、生きてるのにか?」


楊貴

れが此奴こやつの願い。望み。……じゃが……此奴こやつはちぃと人のごうを吸い過ぎておってな。息絶えねばごうは消えぬ。何故なにゆえ人里に下りたのじゃろうな…」


安良城

「まだ、生きてるんだろ?」


楊貴

「辛うじて」


安良城

「なら、俺が助ける」


楊貴

「ほお? 小童が、此奴を救えると思うか。…ふむ。多少の心得は会得えとくしておる様じゃが……ほんに、救うと言うか?」


安良城

「…ああ、助ける。まだ生きたいと、そいつのが俺に訴えているように見えた。だから、助ける」


楊貴

「ほっほ、良ぉ言うた。ならば救って見せよ。小童…其方そなたの名と、にえを差し出せ。さすれば其方とショウの生命いのち、繋げてやろう」


安良城

「に、え?……名は、安良城あらき 誠明せいめい。……贄……」


楊貴

「ほぉ…? 其方そなた、セイメイのおとを持つのか。──…其方のひとみは、美しいのぉ…」


安良城

「…な! い、いつの間に目の前に……」


楊貴

「………貰うぞ」


安良城

「は?…っ!!」



【間】



安良城

「…っ!!…は、夢……」


祥貴

「(障子を勢い良く開けながら) おい、安良城あらき! いつまで寝てやがんだ! 起きろ!!」


安良城

「……ん、…?」


祥貴

「寝惚けてねーで、支度しろ! 朝飯が冷めちまうだろ、おい。安良城あらき!」


安良城

「…アレは、一体…」


祥貴

「……おい、大丈夫かよ? 具合悪いのか?……安良城あらき?」


安良城

「………何でも無い」


祥貴

「あー? 変な奴。かくさっさと支度しろ、冷めたら不味まずくなるぞ!」


安良城

「あぁ……」


祥貴

「ったく、大丈夫かよ……」


安良城М

「まだ心配そうな祥貴しょうきに、先に食べていてくれと伝えると渋々部屋を出て行った。

 最近になって妙な夢を見る。地面に転がる白いふくろう九尾きゅうびの狐のあやかし。その手が伸びて顔を覆う夢。これは現実に起こったのかは分からない。だが夢を見た後、目覚めると左眼ひだりめが痛むのだ。」



【間】



祥貴

「ところで安良城あらきさんよ」


安良城

「なんだ? 改まって」


祥貴

「……最近、体がだるくてさ……安良城あらき、体調悪くなってねーか?」


安良城

「体調? そんなに悪くは無いが、なんだ、変な物でも拾い食いしたんじゃないのか」


祥貴

安良城あらきじゃあるまいし、それはねぇよ。そっか……」


安良城

「なんだ、煮え切らんな?」


祥貴

「んー……。こないだ街に行ったからかな」


安良城

「街に?……一人で行ったのか?」


祥貴

「いや、ほら、女将に頼まれて買い物付き合ったんだよ。出掛ける時声掛けたろ? お前寝てたけど」


安良城

「あぁ……で?」


祥貴

「うん。で、買い物終わって路地裏で女将待ってたらさ……声が、聞こえて」


安良城

「声?」


祥貴

「何て言ってたっけな……けど、あの姿は……どっかで見た…」


安良城

「……」


祥貴

「…狐……」


安良城

「きつ、ね?」


祥貴

「ああ、犬かとも思ったんだけど尻尾が狐っぽかった…ように見えた。ありゃぁ妖怪だったんだろうな。そいつと目が合って頭に直接声が響いて。『そくさいのようじゃ、のぉ』?……とか何とか、だったかな…」


安良城

「……お前の、昔の知り合いなんじゃないか?」


祥貴

「そうなんかな、安良城あらきに助けて貰う前の記憶ねぇか、ら…(突然首元を押さえる)・・うっぐ…!!」


安良城

「っ! おい、どうした?!」


祥貴

「触んな!!」


安良城

「!?」


祥貴

「なんっ、か…ク、る……」


安良城

祥貴しょうき!」


祥貴

「…ッ、あああああ!!!」


安良城

祥貴しょうき!!」


祥貴?

『……妾は、ショウでは無いぞ?小童……』


安良城

「なっ…(左眼に激痛が走る)ッ、痛……」


祥貴?

『久しいのぉ、覚えておるか?…とは言え、記憶は書き換えておったままかのぉ』


安良城

「っく…お、前…、なん、だ……」


祥貴?

『…ショウの生命いのち大分だいぶん清められた。此れならば……』


安良城

「……っ、おい、待て!」


祥貴?

『契約は満ちた。妾のもとへ……』


安良城

「っく…待て、祥貴しょうきーーー!!」


安良城M

「人型だった祥貴は元の姿、白い梟の姿になると家の壁をすり抜け、外へと飛び出して行ってしまった。俺は直ぐに追い掛けようとしたが、左眼の激痛に耐え切れず意識を失った。

 三日三晩、高熱と激痛にさいなまれ続けたものの何とか快復かいふくした俺は、いつの間にか左目の視力も戻っていた。

 動ける様になった俺は書き換えられていた記憶が戻り、それを頼りに山へ探しに行ったのだが、俺のかたわらにいた祥貴の姿を、見付けられる事は出来なかった。」





終わり

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翠梟の瞳《すいきょうのひとみ》 夏艸 春賀 @jps_cy729

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