第9話

◯病院・個室の病室

   うおのめは病院のベッドの上で顰め面。

   片方の足に包帯が巻かれて吊ってある。

   隣にはやまいが立つ。

やまい「これで晴れて両足アーマグラフになったわけだけど、でも注意して気をつ

 けてくれよ。エネルギーの消費量は以前の倍だ」

うおのめ「要するに倍強くなったってことですよね」

やまい「ふふ好きだぜ ユーのそういうところ」

うおのめ「コタロウはどうしてますか?」

やまい「健康状態は至って良好。だが精神的メンタルの方が問題だ」

うおのめ「……」

やまい「しかしまさかぼくらの探し物が 彼女の忘れ形見の中にあるとはね」



◯同・廊下

   コタロウとメバチ子が並んで歩く。

   しかしコタロウは元気がない。

メバチ子「あなたのお母さんはシロモノのエージェントだった でも突然姿を眩

 ましてしまったの シロモノは彼女の行方と 彼女が持っていたとあるものを

 探していた それが生命電気『アパタイト』 どういうわけか今あなたの体に

 流れているわ」

コタロウ「……」

メバチ子「アパタイトは人類と生命電気の未来を左右すると言われている 嫌が

 応にもこれからコタロウくんは戦いに巻き込まれる …というのは建前でここ

 からは私個人の意見ね」

   メバチ子、コタロウのペンダントを渡す。

メバチ子「これ治しておいたわ 生命電気感知ジャミング装置 これさえ持って

 いればあなたの存在は組織にも憑キモノ家電にも悟られることはないでしょ

 う」

コタロウ「……」

メバチ子「わたしたちは死してなおあなたを守ろうとした月蝕先輩の意思を尊重

 します」

   コタロウはペンダントを抱きしめる。


◯同・病室

   うおのめの病室にコタロウとメバチ子が入ってくる。

   コタロウはうおのめの方を見られない。

うおのめ「コタロウ 妙な責任を感じてんじゃねえぞ」

メバチ子「本当ですよ 生身の足で受け止めるからです バカですよバカ バ

 カ!」

うおのめ「うるせえなあ」

コタロウ「でも…ぼくのせいで…」

   うおのめ少し困った顔をする。

うおのめ「おーけーだったらこうしよう もし責任を感じてるとしたら …しば

 らくてめえんとこでご厄介になっていいか?」

   コタロウの表情がパッと明るくなる。

コタロウ「もちろんだよ! 早速夕食の準備をしなきゃね! あ二人も来て! 

 アッコ ちゃんも呼んじゃおう! よーし今日の夕食は 満漢全席だよ! 猿

 食べよう猿!」

うおのめ「…猿はイヤだな」

  


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