ハウンド・ア・バウト!
あたりけんぽ
プロローグ
いつかの未来の五分前
薄暗いコクピットの中で、
この
競技に参加する理由。この先に待ち受けるもの。可能性。その全てがわかったとき、どんな気持ちでここに立っているのだろう。
『もしもさ、賞金ゲットできたらどうする?』
と、彼女が尋ねたのを思い出す。
まるで絵空事を語るような口振りにおかしさが込み上げる。自分よりも彼女のほうがずっと近い位置にいるのに。
何も思いつかない、と無難に答えたことを覚えている。
夢がないなあ、と彼女が無邪気に笑ったことも覚えている。
しかし、志之の記憶により濃く焼きつけられていたのは、海の波に視線をぐらつかせる彼女の表情だった。
『なんてね、私も同じなんだ』
彼女はヒロインなのだと思い込んでいた。自分とは無縁の輝かしい道を
幻想は幻想に過ぎないのだと、今なら知っている。
人よりうまくできるという自信だけを
ただただ、目の前に現れる壁を、ひとつひとつ、クリアしているだけだ。
これもその『ひとつ』になるのか。
呼吸を整える。
ホログラム
つい
ラグはほとんどない。コンマ数秒といったところか。
自分の感覚とマシンの挙動を同調させていると、カウントダウンが明滅した。試合開始まで、あと六十秒。
疑問は山積みでも、これからやることは単純明快だ。
走って、殴って、撃って、戦う。
志之はアイドリング状態だった戦闘思考を起動。
ゲートが開け放たれ、ゲームが始まる。
橙色と黒色に彩られた機体は、マシンガンを構えて白光のもとに躍り出る――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます