デネヴォラアスガルド~暗黒卿とカーバンクル公の甘き蜜月~

耳栗 有志

壱伝承

 そのグルガン族の男は、静かに語ったー



 不死者討滅作戦、通称「双頭の蛇」。

 ジャパエデン帝国中を震撼させた事件、その終結から、すでに数日が経過していた。

 人の書いた予言の書により、神々の預言は覆された。

 もはや、これより先は預言書の記述にない世界……。




 討滅祝いの宴まで、カーバンクル公たちは神羅屋敷で戦いの疲れを癒す、というシナリオだった。

 魔導生物たちの、酒や女などよりもよほどいい計らいだ。


「再びようこそ、我が愛の巣へ……」


 とはいえ帝国には、相変わらず酒と女をかっ食らう毎日を過ごす者もいる。


 舌なめずりをしながら出迎えた淫鳥、もといストラトエイビスに、サー=ヴァル暗黒卿とカーバンクル公は後退りした。眷族を己が過ぎ去りし過去に隠す暗黒卿と、どこか冷めた目で屋敷の管理者を眺めている公。


「……いいから、聞け」


 二人の態度にいささか無念そうなかんばせになりながらも、それでもストラトエイビスは語り出す。


「あたしの奴隷に相応しいお双獣をおいていくのは心苦しい。だが、宴の準備を手伝わなくてはならなくてな。あらゆる材料を揃えるためにも、何千年、いや、何万年と続けてきた縛りプレイを解禁し、まずは帝国の女子寮視察に赴く必要があり……。一応、ビヨンドフェンリルさんとアミシティアバッカスさんに守護を任せてはいるが……」


「フン……案ずるな。私の目を見よ。カーバンクル公がデュナミスに取り込まれる刹那も、私が自慢の『白銀の爪牙』でファルシから守ってみせよう! 本気だ」


 自然体で凄んでみせる暗黒卿に、傍らのカーバンクルも不敵な笑みを浮かべる。


「ふふ……貴様は変わらんな」


 暖かな光に満ち溢れた、有限の一時。


 だが、それは新たな災厄の前触れだった。


 この時は誰も知ることはなかったのだ。公のカオティックDに、FF以外のゲームをした時のような感情が浮かんでいたことは……。

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