修行中故名無し

夜道に響く

街灯により、壁に影が映る。


「まだ生きているのか」


僕は、ぼそりと呟く。

現実逃避のためか、毎晩のように夜道を彷徨う。

他人が敷いたレールを進むこの人生。

何の目標もなく、何もすることができない。

抗おうにも、相手が強すぎる。

なにせ相手は、運命、なのだから。

人間一人の力では、せいぜい嫌な顔をすることぐらいしか抵抗できない。


君なら大丈夫。


闇を漂う中、この言葉が脳内を支配している。

周りの人間は、口々にこれを言う。

無責任に僕に向け発せられたこの言葉が、僕を苦しめていることを知らずに。

何もできない自分の何が大丈夫なんだ。


いっそ死んでしまいたい。


そう常に考えている。

だからといって、自らこの人生を断つ勇気は、ない。

ただ生きるだけにしては、長すぎる時間だ。


ふと足を止め、縁石に腰掛け、タバコに火をつける。

吐き出された煙が、横に流れていく。

いつもこの場所で、休憩をする。

この時間だけ、生きている気がする。

タバコについた火を見て、短いながら力強く存在を主張するコイツが、羨ましいと感じる。


明日もまた、先の見えないレールを進むのか。


変わらない景色を見ながら、最後の一口を吸う。

今度は、真上に煙が上がる。

ついに、自分を後押しする風すらも消えたようだ。

立ち上がり、再び闇に敷かれたレールを進む。

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修行中故名無し @uukk9612

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