第22話 みつからない

 痛みってのはある程度波がありまして。多分、「彼ら」にはそれがわかってるんでしょうね。

 昔、大学の近くに住んでいたんですよ。まあお陰で、夜中でもある程度人の声が外から聞こえるんですね。

 夜中の蒸し暑い夜のことでした。外耳炎の痛みで寝付けなくて、日をまたぐ頃まで起きてたんです。その日はやけに外が静かでしたね。


「いっ……」

 頭を抱えて強い痛みに耐えていたときのことです。


 チッ

 って舌打ちが聞こえたんですよね。外からの音だと思いましたよ。でも、そうじゃないんだ。


 耳元。触れるようなギリギリで誰かが舌打ちをしているんだ。

 耳たぶが微かな風の動きに気づいて、反射的に音の方向に首を振るんですけど、誰もいないんですよね。


 夜が明けるまで、ずっと舌打ちは聞こえてました。


 意外と身近に、「彼ら」は居るんですよ。

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