旅立ち編〜魔導学園からの招待状
「やぁ、修行の邪魔して悪いね?」
アルミーナに案内されて入った部屋には、レイスが待っていた。
レイスだけではなくリドルフ、そしてメイリーンの姿もあり、2人とも俺に一礼している。
「…それは別にいいけど…なんだ?」
この場にリドルフやメイリーン達までいるのが気になった。
アルミーナは一礼してすでに退室している?
「レオはさぁ…今後の方向性ってあるの?」
今後かぁ…、クリスを待つ方向性なのは確定だ。
あとは修行を続けてある程度強くなったらこっちから探しに行くのもいいかと、ミシェイルの王都解放だってあるし…。
「基本的には修行を続けて…そうだな、とりあえずは成人までは修行に徹してって思ってるけど」
この世界の成人は15歳だ。
つまり俺はあと5年修行に明け暮れるつもりだ。
合計10年修行漬けとか変態かよ、と前世の俺は思うだろう。
「なるほどぉ〜…」
「なぁ、前置きはいいから本題に入らないか?流石にこの顔触れからして多少なりとも重要な話をがあるんだろう?」
少なくとも領地の何処かに謎の危険生物が、とかではないだろう。
そんな話ならアルフリードも呼ぶべきだし、レイスから伝える意味はない。
「そうだね、じゃあ本題!父上から手紙が届いたんだ…、どうやって俺の居場所を見つけたのか分かんないけど」
「お前の…確かエルフの国の…」
「そうだよ!」
忘れがちだがコイツは王族だ。
しかも誘拐されて海を越えてやってきたのだ。
つまりは帰還命令とかそんな感じか?
「…レオを呼んだ理由はこれだよ」
レイスに手渡されたのは紙には“メニア魔導学園入学招待状”と記載されていた。
そしてそこには“レオリス・アストラル様”
他にも“レイス・アルメニア様”
“ミシェイル・バルメリア様”と書かれた紙。
「メニア魔導学園?」
「そう、前に話したと思うけど、エルフはっていうより俺の父上は魔法の研究に入れ込んでいて、魔法を開発してる」
「あー、確かにそんな感じのこと言ってたな」
レイスの使う魔法って確かその開発途中の秘匿魔法だとか。
「ある程度開発が進んできたのもあるんだろうけど、さらに魔法を調べるにはさ、使う人を増やす事だったり、色んな人の魔法を見て解析していくべきだと思うんだよね」
言いたい事はわかる。
魔法はかなり特殊だ。
電気を生み出す魔道具はあっても、みんなが雷の魔法を使えるわけではないのだ。
それを用いた技術もあるのだろうが…。
つまりは色んな魔法を調べるのは人が多いにこした事はないだろう。
そしてデータを取る。
名のある家や、才能のありそうな者に片っ端から声を掛けておく。
卒業したものが大成すれば宣伝にもなるさらによし、大成しなくとも身元の確認のし易さ、最悪データになれば問題ないと…。
うん、非常に興味深い。
「なるほど、ね…俺とレイス、それにミシェイル様に…」
しかし気になる事もある。
俺はわかる。
こんなんでも一応元バルメリア王国の剣聖の家系。
まぁ俺が生きてるかどうかの確認も必要だろうけど…。
レイスやミシェイルは行方不明になっていたのでは?
と思ったが、もし俺の生存確認を学園関係者が見たり聞いたりすれば、一緒にいる者の素性も調べるかもしれない、か…?
色々不確定要素が多過ぎる推測だが.…。
「少なくとも俺は戻って入学しろってことだろうね」
レイスは別に直接の手紙があるようだ。
そりゃそうか…。
「……」
正直修行としてはいい事じゃないかと思う、
魔法については俺も興味はある。
剣士として生きていく予定だが、興味があるのは仕方ない。
純粋剣士としてを望んでいるならごめんなさいお祖父様お母様…。
お母様に言われたら反抗してやるが…。
だが、ここでクリスを待つのは?
クリスもドレイクも居ないアストラル領を俺が離れていいのか?
そんな事が頭を駆け巡る。
「レオリス様、クリス様もドレイク様もレオリス様が成長されたら学園には通わせる予定でした、確かに魔導学園ではありませんでしたが、レイス様がここに居るからこその縁かもしれません…、私はいい話だと思います」
「私も妻と同じく賛成です、領地の事はアルフリードもいます」
メイリーンとリドルフは2人揃って賛成か…。
「少し考えさせて下さい…、あとミシェイル様にもきているなら、本人の意志を尊重させてやってください」
俺はそれだけ言い残して部屋を出た。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
屋敷の庭に出る。
表の庭にはミシェイルがあるはずなので裏庭に出る。
表裏といっても、裏庭が整備されていないわけではない。
ただ少し表に比べて地味なだけだ。
適当な場所に座って空を見上げる。
何処の世界の空も青い。
雲は白いし、大きさや形もバラバラだ…。
魔導学園か…。
いい話だよな…。
修行するにしてもいい話だし…、世界を知るにしても…社会勉強にもなる。
ドレイク達が学校に通わせるつもりだったっていうのも多分自立とか社会勉強って事だよな…。
しかも三大国の1つが行う学園。
もうやってるんだっけ?
俺なんかにも届いたんだし、きっと各国の色んな奴に…。
そしたら色々な経験にもなる。
金銭的に不安があるわけじゃない。
そう考えればやっぱり行かないって手はないはずなんだ…。
エイルーナがこっちにやってきた。
何も言わずに掃除を始めている。
何故行きたくない気がするのか…。
クリスを待つ?
自分がここを離れてもいいのか?
クリスはいつ帰ってくるかわからない。
俺がここにいても、リドルフ達やアルフリード程やれる事があるわけでは無い。
楽なんだろうけど…。
クリスをいつか探しに行くなら…。
ミシェイルの目的を手助けするつもりなら…。
もっと強くなるんだって誓ったんじゃなかったのか?
「何を悩んでいるんですか?」
エイルーナが掃除をしながら質問してくる。
その声は少し怒気が混ざっている気がする…。
朝の事まだ引きずっているのかな?
何にしろ聞くタイミングとしては少し遅いが…。
「レイスと魔導学園に行くかどうか、かな?」
「……そうやって悩めるのはいい事だと思いますよ」
「え?」
エイルーナを見つめる。
彼女は少し冷めた目で俺を見つめ返す。
「レオリス様の目標はなんですか?」
「目標……」
「私はクリス様のようになる事です、つまり強くなって剣聖の名を継ぎたい!」
その目は真剣そのものだった。
エイルーナは本気で剣聖になりたいのだ。
彼女も剣聖に必要なものが何かを…理解している。
クリスが異例というのも…。
それでもそうやって目標を…夢を語る。
「強くなる為のチャンスが来てるんですよね?魔法を学んで、世界中の強者と競う事が出来る、そんなチャンス…私は羨ましいです…」
羨ましい…確かに贅沢だよな。
行きたくともいけない奴がいる。
俺も強くなるのが目的で毎日修行してる。
クリスやドレイクのように剣聖の名を継ぐために。
うっすらと行こうかなと傾いていた思考の背中を押してくれた。
完全に決意をする事が出来た。
学園に行こうじゃないか!
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