幼年期〜剣と魔法

 俺の特訓の日々は始まった。



 まずは剣術である。

 とりあえず基礎トレーニングとなると、無理のないように走る。

 そして母に素振りを見て、細かな注意事項を確認して、同じように素振りをする。

 基本はこれだけだ。

 まだまだ小さい子供なので無理はさせないようにと、細心の注意を払って行なっている。

 正直剣術はよくわからないが前世での空手の事もある、基礎は大事なのでこのまま継続していこう。




 次に読み書きである。

 わかっていた事だが、前世の記憶はあまりにも頼りないというか、何一つ読めないので仕方なく地道にやっていくしかあるまい。

 最もこんな子供だからか、もしくはこの体…というより脳の出来がいいのかスラスラ覚えていくことができている。

 ちなみにこれはミリターナが教えてくれる。



 次に算術だが…

 俺の学歴は高校中退になる。

 中退理由は失血死だが…

 つまり四則計算くらいは余裕で出来る。

 こちらもミリターナが教えてくれたのだが、ミリターナが驚いていた。

 なので確認程度で授業を受けてすぐに終わり、その他の授業へと時間を回した。



 次に歴史だ、これは祖母が自ら教えると言い出した。

 お婆ちゃん的に孫といる時間を増やしたいという願望もあったが、許可が出たらしく嬉々として優しく教えてくれる。



 剣術は体が出来ていないのもあり、なかなか実感が湧かない。

 読み書きは分かりやすく出来ていることがわかるが、まぁ楽しくはない。

 歴史に関してはそこそこ面白い。



 我がアストラル家はかつての人魔戦争で初代剣聖が白竜を倒して剣聖という名を授かった。

 その力を代々次世代剣聖に受け継がれてきたらしい。



 何か微妙に濁して話されている気がしたが、それは後々自分で調べていくことにしよう。

 何せ忙しいのだから…



 算術がなくなったので、ミリターナに頼んで魔法を教えてもらうことにした。

 ミリターナに頼んだ時に彼女も少し悩むような顔をした。

 だが頼み込んでなんとか教えてもらうことが出来た。



 以前にも少し聞いた事だが、体からマナを放出する。

 それが空気中に存在するマナに干渉することで魔法になる。



 何より魔法にはまだまだ謎が多く、人によって使える魔法が違うのだ。

 ヒーリングを教割れば誰でも使える訳でもなく、何かふとしたきっかけで、自分のマナの影響か古代文字が読めるようになる。

 その時に魔法が使えるらしい。


 と、一通りの説明が終わる。


 ちなみにこの屋敷で魔法が使えるのはミリターナと母クリスだけらしい。

 魔法にもセンスがあるのか。

 つーか母様国一の剣士じゃなかった?



 それは置いといて、本来魔法とは余程センスに恵まれたりしなければ使えるようになるまで大変らしい。

 剣の家系である俺は、家の方針としては剣をメインに修行させたいので、魔法にあまり興味を持って欲しくなかったとの事だ。



 なのでミリターナはあんまり教えるのは良くないのでは…と思ってるらしい。

 というか彼女口が軽い…メイドとしていいのだろうか…




 ともあれ魔法の修行はマナを感じ取る事かららしいので、ミリターナにマナを送り込んでもらうことから始まった。



 ――――――――――――――――――――――――







 剣と魔法のファンタジー世界での修行は続いた。


 前世では、漫画も読んだしゲームもした。スポーツもやってと広く浅くであった普通の男子高校生だ。



 やはりファンタジー世界に憧れていた事はある。

 周りは…というかアヤとケンジと話した事はあった。


 ケンジは生まれつき骨格がしっかりとしててガタイもよく身長も高いのもあって、剣士だの騎士だのと言っていた。


 アヤはシーフがいいらしい。

 オンラインゲームで職を選ぶのはそういう職ばかりだった。短剣や弓がメインで手数と撹乱でのヒットアンドアウェイというのがいいとかなんとか…


 ちなみに俺は魔導師が好きだった。

 派手な魔法で一気に殲滅、火力担当みたいなのに憧れていた。



 そんな俺が今ファンタジー世界に転生して、魔導師ではなく剣士を目指す。


 正直憧れはあるが、仕方ない気がした。

 剣の家系らしい我が家で剣を習う。


 理由はある。


 まずは家柄である。

 聞くところによると、我がアストラル家は剣の家系であり、かつて剣聖の名を継いだ祖父ドレイクと、現剣聖の母クリス、二人が継いで欲しいと思っているであろうという期待に応えたい。

 こんか子供が本来ともつ感情ではないが、俺は前世の記憶を持つ転生者だ。

 体感的な年齢はもうすぐ20歳と、前世では成人…大人だ。



 故に考えを持った。



 勿論そんな綺麗な感情だけじゃない。

 剣聖である母に直接教わるという事は貴重な事だし、その家系なら剣の才能があったり…まぁ転生者である俺に遺伝なるものが適用されるのかわからないが可能性はあるだろう。



 それに剣の才能が無い事を確認してからでも遅くは無いだろう。



 よし、当面の方向性は決まった。


 とりあえず剣術を頑張ることにした。






 ――――――――――――――――――――――――


 ~クリス視点~




 はじめは本当に心配だった。

 ルーナを見ていたから赤ちゃんっていうのはどんなものなのかイメージしていた。


 でも違った。



 ルーナと違い泣かないし、周囲や私の事を観察するように見てくる。


 そんな様子の息子をミトレア様も、メイリーンさんやターナも心配していたし、少し気味悪いと思っていたみたい。



 でも不思議なことに、我が子が変だと理解はしても気味悪いなんて思わないし、寧ろそんなこと言う二人に少しムッとする程度だった。




 不思議なのは他にもあった。

 授乳に抵抗があるというよりは恥ずかしそうだったり、ハイハイしはじめたと思えば、行動力が桁違いだった。


 言葉遣いも子供らしく無い気がする。


 言い出したらキリはない。




 あの人がこんな感じだったのかな?

 あんまり子供の頃の話って聞いたことなかった気がする。

 今度ミトレア様に聞いてみよう。














 そして今息子は私の前で木剣を振っている。



 私の遺伝子か、剣の資質はあると思う。

 素振りの音も、子供の割には鋭い気がする…親バカかな?




 でも本当は魔法がいいのかな?

 ターナに魔法を教わるように自分から言ったと聞いたし…






 でももし、レオが剣士になりたくないって言ったら…




 ドレイク様は許さないだろう。剣士なって家督を継ぐようにキツく叱りつけるだろう。


 私も剣士になって欲しいという想いはある。



 でもそれはドレイク様のように家督を継ぐとかそんな話じゃない。

 剣のことなら私は教えてあげられる。誰よりも…



 このいつ争いに巻き込まれてもおかしくない世界で、剣は自分の身を守る術になる。




 でも本気で魔法を学びたいと言うならアストラル家を裏切ってでもレオのやりたい事をやらせてあげる。

 それがあの人との約束だから…




 今日も私と同じ赤い髪の少年は元気に剣を振っています。

 この真面目な顔は私よりあなたに似ているのかもしれないね。





「レオ!今度はこの剣に打ち込んでみて!」



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