レオリス・アストラル幼年期
幼年期〜異世界転生
記憶があった。
刺された痛みが…命の感覚がゆっくりと薄れていく喪失感。
そう…俺は死んだんだと…
しかし、俺は転生した。
どうやら生まれ変わりはあったらしい。
生前?…この場合既に前世か…
前世ではそんな事信じていなかったが…
しかし生まれ変わりがあったものは仕方ない。信じるとしよう。
前世…あの後が気になる。
妹が、義父がどうなったか…
最後に現れたケンジは上手くやってくれたのか…
なんて考えていたら眠ってしまった。
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何をしているかと言うと、今は赤ん坊である。
勿論喋れない。
一人で動く事は出来ない。
眠くなったら我慢出来ずにすぐに寝てしまう。
便意を感じたらすぐに排出する…正直嫌な気分になる。
前世の記憶があるなんて事は聞いた事はない、ファンタジーの世界の話だと思っていたがどうやら実在したらしい。
それはさておき、便意を我慢出来ないというのは本当に惨めな気分になる。
記憶が無ければ気にならないのだろうが、文明人として生きてきた記憶?プライド?のせいで背徳感に苛まれる。
と、基本は赤ん坊ライフを送っている。
周りからすればあまり泣かないことを不審に思っているようだが仕方ない。
不自由であるとはいえ、人として生き方を少しは知っている、経験があるわけではないが知識はある。
眠たくなればすぐに寝るし、便意があれば漏らす。
それはもうオートだ、生理現象には従えということだ。
問題食事である。
赤ん坊の食事は…母乳である。
腹が空けば何となく察してくれるらしいし、時間に毎回誤差はあるものの定期的に色々チェックも入る。
問題は母乳が何処から、何から、というとこである。
前世でも記憶のない物心つく前には当たり前のように吸っていたことだろう。
しかし、物心ついて以降…遠回しに言うのはやめよう。
思春期を過ぎてからそのような胸に…なんて経験がない。
高校生だったし、早い奴らは既に経験してる奴もいただろうが俺は未経験だ。
今世の母は美人だ。
赤い髪に青い瞳で欧州系の顔立ちだろう。
赤い髪なんて…と思ったがファンタジー補正もあってか違和感は無い。
かといって母親であることに変わりはない。
別に興奮するわけでもない…が…
やはり背徳感がすごい。
まぁそんな感じで赤ん坊ライフを満喫しているのである。
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ぐだぐだと赤ん坊ライフを楽しんでいる?訳でもない。
常に周囲を観察しているし、聞き耳は立てている。
言語に関しては日本語ではなかった。
英語やスペイン語などと考えたが、少なくともすぐに理解できる言語は使われていない。
ただ赤ん坊とはすごいもので、何となく聞いているだけで、言語を理解出来るようになってきた。
家の中は俺の知る前世より少し文明として遅れている気がした。
家は広さの割にテレビなどの電化製品を置いていない。
エアコンすら見当たらないが、部屋の温度は適温である為。暑い寒いと感じた事は今の所無い。
世界にはテレビがない国なんていくらでもあるのだ。
気温も過ごしやすい気候の土地なのかもしれない。
まぁ前世で見たテレビなんて無い国や民族達よりは文明的な服装をしている気はするが…
まぁそんなことを気にしていても仕方ない。
そもそも生まれ変わりなんてものがあっても、俺が死んだあの頃から何年後なのか、わかるわけではない。
もしかしたら核戦争がおきて文明が一度滅んだなんて言われてもどうしようもないのだから。
だから観察はするが、深く考えずに行く方針だ。
だって仕方ないのだもの…
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やる事がない、というか基本食事と睡眠の繰り返しであるが故、赤ん坊の生活というのは時間が経過が早かった。
首が座ると、積極的にずり這い…つまりは匍匐前進をして可能な限り動いてみた。
自分を本当に赤ん坊というのかは怪しいところではあるものの、赤ん坊同様に好奇心旺盛なのは変わらない。
なにせ見たこともない物が多い。
知っているようなものであっても、実は違ったりと興味は尽きない。
ハイハイの免許皆伝を獲得すれば行動範囲が広がる。
ずり這いではこの部屋…とりあえず子供部屋と呼ぶ事にしよう。
子供部屋を出るには親や使用人に抱き抱えられてはじめて出る事が出来る。
しかしハイハイとなれば違う!
使用人や親がちょっと扉を閉め忘れたり、掃除をし始めたりすれば、隙をついて子供部屋を抜け出す事が出来る!
子供部屋では満足出来なくなった俺は、家…というより屋敷を探検したい。
この好奇心は止められないだろう。
家はとりあえずデカかった。
廊下には花や絵画。
無駄に広くデカイ玄関?という名の広間。
天井にはシャンデリアのような豪華な何か…
使用人というかメイドさんがいる。
まぁ…つまりは、金持ちだ。
メイド付きという事は余程の金持ちだ。
子供部屋に定期的に来るメイドでも3人ほどいる。
美形が多いのでもしかしたら…というより似てる気がするので姉妹とか親子かと思う。
そうやって廊下を出るとハイハイには壁が現れた…階段である。
子供部屋は屋敷でおそらく2階に位置する。
3階までは確認出来ているがその上があるかは知らない。見上げて見る限り多分ない…
予想では3階建てのこの屋敷を探検する。
四足歩行という名のハイハイ、犬猫のように軽々しく階段を登って行けるならなんの問題もないが、そうもいかない。
2階でとりあえず満足する…という事は出来なかった。
何故なら扉を自らの力で開け閉め出来ないので必然的に範囲は限られる。
ドアノブは物理的に届かない…となるとどちらかとなれば階段にならだろう。
下りの階段を見下ろす。
簡単そうに感じるだろうが、難しい…
赤ん坊として生活して理解した事がある。
頭が重い!
体全体の殆どが頭という、昔のゲームキャラみたいな体型である。
さらに全体的に筋力が未発達である事から、体を支える力も弱い。
下りは非常に恐ろしい。
気を抜かなくても落ちそうな気がする。
なので選択は上りだ。
まず段差に手を乗せる。
次は頭を乗せてグッと手に力を入れつつ足にも力を入れる。
体が持ち上がる感覚がある。
あれ?これって…
結論から言おう。
階段は攻略出来なかった。
代わりに掴まり立ちを覚えた。
ちなみに掴まり立ちして少しぐらいで、メイドさんが俺を発見して子供部屋へ連行された。
仕方ない、歩く練習から地道に行うことした。
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